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エピローグ☆浩次と冴子
「なんで俺を避けるんです?」
「えっ!いいえ」
思わず否定する。
「10歳の俺は抵抗なくハグできるのに、なんで俺は避けるんですか?」
40歳の浩次さんは一生懸命だった。
「私…、20歳の浩次さんを愛してるんです」
「あああ」
浩次さんは髪をかき回した。
「だけどもう、やつとは会えません。その代わりに俺が!冴子さんのそばにいます!」
「でも、もう少し時間をください。いつかあなたを、私と同じ時間軸に存在するあなたを想うようになりますから」
私はぼろぼろ涙をこぼした。
「冴子さん!」
浩次さんが私をぎゅっと抱きしめた。
「俺の胸で気が済むまで泣けばいい」
「浩次さん…」
私はきっとこの浩次さんを好きになる。そう自分に言い聞かせて浩次さんの顔を見上げた。
10歳も20歳も40歳も同じ面影が重なって、私は気が遠くなりそうになった。
「用事が済んだら一緒に帰りましょう!元の時間軸へ」
頼りがいのある男の声が、しっかりとそう言った。
私は深い呼吸をして、身を預けた。
浩次さんは、私を横抱きにして抱えると、耳元で「大丈夫です」と繰り返すのだった。