第2章☆アコースティックギター
第2章☆アコースティックギター
音研のメンバーが集まり始めていた。
浩次さんは愛用のアコースティックギターを取り出して、一曲歌った。
私は浩次さんが歌うのをうっとりして聞いていた。
びん、と張った声がとても素敵だった。
バンドのメンバーは自然に音楽に参加してゆく。いつのまにかドラムや他のギターが加わっていた。それがかえって味になっていた。
次々と曲が流れた。情熱的な歌。バラード。オリジナルの曲を数曲。彼らがいつも練習している通りに。
パチパチパチパチ・・・。
拍手する。
普段は観客がいないらしくて、青年たちは嬉しそうだった。
「お姉さん、浩次のなに?」
鶏ごぼう(鶏みたいな頭してごぼうみたいな手足のこと)の青年が聞いてきた。
「気を使わないで。おばちゃんは、20年後からタイムスリップしてきた浩次さんのファンです」
「へぇー」
「タイムスリップだってさ。じゃあ、未来人?」
「うん」
「おい、浩次。お前初体験まだだろ?この人に筆下ろしさせてもらったら?」
「なにいってやがる」
「チャンスだろー」
やいのやいの。
誰が筆下ろし?とんでもない!
私は頭に血が登ってかあっとなった。
「私、もうおいとまするね」
慌てて、長居は無用とばかりに音研の部室を出た。
「冴子さん」
浩次さんがすぐ後を追ってきた。
「あいつら悪気ないから。怒んないでやって」
「怒ってないよ。ただビックリしたの」
「うん」
「私もう行かないと」
「行くってどこへ?」
「未来へ帰るの」
「…今別れたら、二度と会えない気がする」
どきどき。なんて切ない目で見るの?
「喫茶店で少し時間つぶしていかない?」
「…うん」
大学の生協の建物の二階にこじんまりとした喫茶店があった。
若い頃、ここのケーキを食べたくて、お金がなくて我慢した思い出がある。
…お金!
「私、二十年後から来たからお金が今と違うかもしれない」
幸い500円玉は発行されていた。お札はアウト。
「ほんっとに未来人なんですね…」
浩次さんはお札を眺め透かして見ながら感心していた。
「本当だったら奢らなくちゃいけないんだけどごめんね」
「いいええ」
オレンジジュースで乾杯。
「私、幸せだなぁ」
「なぜですか?」
「すごく嬉しい」
別にジュースで酔ったわけじゃないんだけど、胸がどきどきして、うっとりしていた。
「私、バツイチなの」
「バツイチ?」
「一回結婚して離婚したの」
「ああ」
「すれ違いばっかりで、とうとう子どももできないまま喧嘩別れしちゃった」
「きれいな人が幸せって限らないんですね」
「えっ?私、きれいに見える?」
「俺の母親にちょっと似てるからかな?親近感があるし」
「そっか」
「笑うとかわいいです」
ぼっ!
また頭に血がのぼる。
「もう、行くね」
「もう会えないんですか?」
「大丈夫。20年後、あなたの方が私を見つけて声かけるから」
「そうかな…」
「そうよ。それじゃあ」
「うん」
浩次さんはずっと私を見送っていた。




