第七話‐クリスタ戦線でニアコとプレイヤー狩り
「やあやあ! やあ! きたわよ! あたしがぁ! がおぉわぁあ!」
「よお、来たか天敵」
コイツは、天敵だ。
幻想の存在は、未知を世界に溢れさす存在。
「ニアコだよぉー」
「お前の存在は、曖昧でキャラが掴めなくて、解明できん」
「電波ぎゅんぎゅうだかんね、あんたの理解を遥かに超えた先の果てに、あたしは居るのさぁ!」
「だろうよ、お前と同じ地平で生きてたら、俺は自我が保てる気がせん」
コイツは天敵だ、だが仲間だ。
幻想存在は、観測者にとっては抱き込みにくいのだが、コイツは違う、一線越えて違う。
同胞から見捨てられて、一人で泣きべそかきながら、おにぎりをほうばっていた所を俺が捕まえた形だ。
「うへぇーい!」
無意味に腕なんて上げてからに、酷く純粋無垢で純真、明るく陽気な可愛らしい娘に見える。
が、それは表面で、内面は歪みに歪んだ戦闘狂いで、超絶ドS(ときどき超絶ドM)、平常で付き合いきれない。
まあ、此処にはそういう奴か、そういう奴でも気にならない超絶変人だけなので、まったく問題ないが。
「ねーねー、今日はあたしとあんただけなのぉー?」
「ああ、そうだな、ナルデすらいねーや、よかったよかった、ニアコまで来なけりゃ、おれ一人だったぜ」
本当によかった、最低限、一人さえいれば、俺の場合は最低限はクリアできるのだ。
「さて、今日が何の日か、分かってるよな?」
「うんうん♪ なんだったけ?」
「あれれ、教えてなかったっけ?
混沌陣営主体の混成軍が、そろそろクリスタル戦線の最終ボスをクリアして、
それから帰還の路を辿るから、ポイントδで奇襲って、そういう日だったよねぇ?」
「あっははぁ♪ そうだそうだったのね、知らなかったぁー、だからみんな来てなかったんだねぇ~」
ニアコは「あはあは」言いながら、速攻で逃げようとしたので、むんずと首根っこ捕まえる、てか軽いなお前。
「あにゃにゃ、やだよぉやだよぉ、流石に、あの馬鹿精鋭軍団を仕留めるには、あたしゃの装備はまだま貧弱なんにゃぁ~~!!」
「いいじゃないか。
クリスタル戦線のボスクラスを打倒した奴らだ、いい装備をドロップするかもしれんし。
だいたいお前は、プレイヤーキルばっかりで、実戦経験と実戦での経験地稼ぎがなってねえし。
馬鹿みたいにドーピングした薬物効果補正スキルと、能力値底上げのステータスプラスが無きゃ、
ちょっと初心者に毛が生えた程度のレベルじゃねーか、今回はニアコにとって良い戦争になるぞ、覚悟しておけ」
クリスタル戦線。
そこは、どんな猛者でも、戦場になり、戦争を起こせる場所だ。
ALC、自動レベルコントロール、そのような空間が形成されていて、
どんな超越者でも、そこでなら、同等でやりあえる戦場を発見できるのが売りの場所。
「十数日前、ここに奴らが通った、帰りも同じ道を通るだろうと予測される」
「にゃぎゃははっはっは!!!! よーよーアニキ! もし違ったらどうするんだべらんめぇええ!!」
やば、もう薬キメテ、頭がいい感じにラリッてますよ、この令嬢。
コイツは、青髪青目の、可愛らしい女の子だ、ちょっと清楚風味に目つきが悪戯っ子な感じなのだ。
だが今はサイコにマッドに、ドメスティックなサド顔だ、ああ可愛そうに。
「それなら大丈夫だ、まかせておけ、奴らが此処を通らないなんて事は、万が一くらいだ」
「ほーおほーお、なぜなぜプリーズ!!いえーい!!もらったぁあああああああ!!!」
ばきゅーむ!っと、不思議カシギな擬音が鳴り響き、遥かかなたの魔物が頭部を粉砕される。
彼女の武器は、超長距離スナイパーライフル。
此処は一本道で、視界も開けて、障害物も少々、そのような場所を選んだ、絶好の獲物。
「ナイスショット。
此処は魔物が普通もっといるだろ? だが張り込んでから数十分、あいつが一匹目だ。
つまり、行きで倒してるからだ、帰りは奴らは満身創痍、
別のルートなら沢山の敵との迎撃戦を味わうはめになる、だから必然的にこのルートを通るってわけ」
「なるーっしょ! 大将あたまいいねぇ! よぉ! 兄貴は世界一の策略家! 策士だねぇええ!!」
スーパーロングツインテール振り乱して、きゃあきゃあと騒ぎまくる、目が据わってる少女。
普通の人間なら情緒不安定になって、逃げ出すところだが、俺はなんとなくでも今を楽しんでいた。
風がびゅうびゅう吹いている、木枯らしが舞う。
情報収集して分かったのだが、
今回の、この道の先の先のラスボスは、なかなかの難敵だったようだ、独自のルートで手に入っていた。
それによると、敵はそれによって、相当に疲弊しているらしい、チャンスとしか言い様がない。
「さて、そろそろ来る頃合か?」
「いつでもオーケー、サーチアンドデストロイ」
匍匐の姿勢で、ライフルのスコープの覗き込み、その少女の挑発が風に靡く。
多少なりとも、風の影響を受けないように、事前に位置取りを調整したのだが、運が悪いようだ。
ここはジオフロントのような、広大な地底のような場所なのだが、
なぜ、風がこんなにも吹くと、マジでガチで小一時間問い詰めたいんだが、まあいいだろ。
なぜなら。
「ふえーい!!!」
また、障害物になりそうな位置、巨大なティラノみたいな奴を、
相当離れたこの位置から、最大弱点の目、しかも瞳の瞳孔の頂点、弱点の弱点の弱点。
そこを正確に射貫いた、ゲームシステム上も、三十倍乗のダメージ判定、一撃で爆発、あと炎上もした、焼夷弾。
「うぃぅぅいいい! 今日は調子良すぎぃ! 絶好調うえぇえええいいい!」
コイツの腕は、風程度では揺らがないのだ。
むしろ、風があった方が、上手くなるくらいなのだから、心配するだけ無駄って奴だ、クソみたいに馬鹿上手い技術。
「おい、そろそろ、無駄うちは止めておけ。
初動の一発程度のアドバンテージだが、無駄にするにはちと惜しい」
「うひぃうひぃっひぃ、そうっすね兄貴、兄貴の尻に誓って、ここは止めときましょう」
どういう宣誓だ、やめろっての、そも俺は兄貴キャラじゃないんだがな。
「来た」
案の定、予想と違わず、奴らは来た。
歴戦の戦士のような風貌。
全員が黒聖騎士の歪な毒々しい甲冑姿、重装備、重火力。
「この位置から、行けるか?」
「楽勝楽勝、しばし、待たれよ、、、、待っておれよぉ、、、」
ちなみに、俺が確認できただけで、敵は絶対に確認できないだろう。
俺はゲームシステム上、不可能な方法、観測者特権で、敵を索敵した、つまりズルした。
そしてコイツは、ニアコは、スナイパーとして特化した、インチキ染みたチート能力で、敵を捕捉するのだ。
純粋な距離にして、三十キロメートル少々、この距離で当てれるのか、問うまでもない。
「ハイ来た!” 即死判定!もらーらい!!!♪」
またもバキューム♪っと、ちゃらめろっみたいな毎度変化するコミカルな銃声で、間が抜けたが。
第一射は見事に命中。
敵の大将は無理だったが、これはHP的に一撃で殺せなかったので、やめておいた。
おそらくニアコが勝手に選んだ、副将か、その他の重要どころを殺ったと見た。
「よし、よくやった、その調子で、どんどんやれ」
「おうーよぉ、にゃっははは! 死ねっ!シネ!!!♪」
ばきゅーむばきゅーむ♪、何度も何度も銃弾がリフレインする。
その度に敵が撃破されるわけではない。
一発一発で、敵の進路を牽制、妨害、だんだんと限定していき、
ここぞという場面で、本命の、重装よろいの隙間の隙間、弱点を狙い撃ちして、確実に殺す、プロの手口だ。
正直に言えば、もっと近ければ、敵の被害は加速度的に増すだろう。
「再接近されるまでに、どれくらい殺せそうだ」
「うううふうふぅ~~ん♪、ぬやっやひゃっはっひゃ!!!!
ぎゃっはぎゃっは!!四百だね!! 四桁はいけるよぉ!あは違った、四百四百!いけるいける♪らくしょうっしょ!っしょ♪」
四百、つまり、五分の四。
今回の遠征で、敵は質よりも数を重視した。
そこで、仕留めやすい奴を狙い打って、それだけ殺せるらしい、まあ悪くないと判断。
そこで、敵の通信を拾ってみることにする、なにか得られないかと期待して。
「くそぉぉ!!!!こんな帰還の道で、ぐあはあああ!!」
「アラン!!!?? くそ!! ぐうひゃぎゃああああ!!」
前線で駆けつける、断末魔の絶叫がひきり無しに、途絶えることがない。
「クソ! 死んだら現実でも死ぬのに! なんて奴ら!」
「そうだ! こんなの悪意あるプレイヤーの仕業だろ! ホントなんて奴らだぁああ!!」
ほおほお、普通に避けてる奴もいるのかと、感心する。
超音速で迫る弾丸を、どうやって避けているのか、気になるところだが、
俺の専門分野でもないし、俺個人としては応用性に欠けるので、深くは解析解明しないこととす。
「にゃっにゃっぞくぞじょぉくっ!!!じゅるじゅるっ♪
ねえねえぇ!!! いまっ♪ あたし達って、人を殺してるんだよねぇ?っねぇ??ぇえねええええ!!!!」
銃声が煩いと思ったら、トリップして、ハイになってる殺人者の音色だった。
「ああそうだな、殺してるな」
ちなみに、これはゲームの仕様である。
ゲームにダイブする前に、このゲームには特殊な暗示が、プレイヤーに施される。
それは大体において、この”ゲームが命の掛かったモノ”というのに画一的にされる。
それは洗脳やその他の複合的な作用であり、超強力に脳に植え付けられる。
というよりも、これは催眠やチャチな方式でなく、ただ単にゲームに本気にさせる、という趣向が強い。
なので、短刀的に言うと、命以上にゲームに必死にさせる、ゲームをガチの本気にさせる意味が強いのだが、まあ変わらんか。
「はぁはぁっ、やばいよぉ♪、マジで人ころしちゃってるよぉ、あたしぃぃぃ、ひぃひぃぃ♪、
きもちいいょっひぃぃいいいいいいいいいい!!!ひょおおおおおおおお!!!」
ああ、うん、こいつはこいつで、人の最悪、殺戮で虐殺を楽しんでるようで、よかったよかった、のか?
とかく、コイツの本性がこのように、救いようがないドサドの鬼畜外道鬼娘ってのは知っていたが、実際に直視すると可愛いな、愛せそうだ。
まだまだ距離がある、俺は傍受を続ける。
「くそぉぉぉお!、せっかくラスボスを倒して、帰還して! 現実に戻れるとおもったのに!ぃいいがぎゃぁああああ!!」
「やだやだぁああ!たすけてくれぇええええ!! もうだめだぴょぉおぉぎゃぁが!」
おお、そろそろ、雑魚が減ってきたのか、弱点に当てるというよりも、
足やら手を打ち抜いて、機動力が鈍った第二射で、仕留めるって手に移ってきたのか、考えてるな、
こんなアヘ顔で打ってるのに、まったく信じられん話だ。
「団長! どうしますかぁ!」
「っぅ、しょうがない、俊敏値の低い奴は、大きな声で言えんが、見捨てろ」
「ですがぁっ!」
「分かっている、しかし、この先の敵の戦力が未知数だ。
もし数が多ければ、ここで戦力を目減りさせるわけにも、いかん。
熟練者の生存を第一に考え、弾に当たるような奴は、囮、、、的として考えろ」
ほおほお、後方で、団長らしきリーダーを囲む、円形包囲陣を敷いてる奴らは、既に攻略の仕方を練ったらしい。
そりゃそうだ、そういう風に特攻されて、最短距離を突き進まれるのが、一番いやなやり口だ。
だが敵はそうくるのだろうよ、もう決まったっぽい事だ。
「よし、そろそろ、敵の本陣、だいたい五十か、来るぞ」
かなり減った、もうそりゃ、道に肢体だか死体が、へんぜるのお菓子のように散らばっている。
だが、残りの奴らは精鋭、手強いだろう。
「うっひっひ、いいねいいね、決死の覚悟って奴を、びんびんびんに感じるよぉ♪うううふふん濡れちゃうよぉぉお!」
濡らすな、しかし銃剣を、バヨネットを取り付けて、準備を進める冷静さがあるので、捨て置く。
そして、既に、敵との先頭距離、百メートル切った。
第一撃は、瞬激の切り込み。
二刀流の、妙に小回りの効く、側回転の、回りこんでも十二分に素早い奴が、
青髪の少女のわき腹を突き刺そうと、打突を繰り出した。
「きぃひぃっ」
だが遅い、いや遅かった。
既に、一人目は、血を吐いて、消滅している。
幻想種、吸血鬼や銀の種族する殲滅する、特殊なバヨネットで猛烈に刺し貫かれている。
攻防は一瞬だった。
まずは初太刀をニアコがバックステップで、最低限の動きで避けてからの、
銃剣での軽妙な三段付き。
一打で敵を怯ませ、二打で敵の回避を無理にさせ、体勢が崩れたところに、心の臓腑を抉る奇跡。
たったそれだけ、紙一重の攻防だった、芸術だった。
「あひゃ、あひゃっひゃ」
敵から見れば、悪夢のような光景だろう。
普通、スナイパーは接近戦が弱いはずだろう、それは経験に裏打ちされた確かな真実なはずだ。
その確信を揺らがされて、敵集団は驚愕の有様を呈する。
「あっはっはっ♪ ほらほら、もっともっと、ガンガンにあたしを突いてみないよぉ~~!
貫けるかもよぉ♪ 気持ちいいかもよぉ!殺してみなよぉ?? こんな超絶美少女惨殺できる正当な機会なんてぇ~滅多にないんだからさぁ!さあぁさああ!!!」
頭を電波にかき回すような、甘くも、鮮烈に刺激的に、強制的に蕩けさせるような、せせら笑い台詞。
悪魔の、悪夢のような笑い声に聞こえている事が、容易に想像できる。
敵はおそらく、第一の刺客を失ったのだろうが、それでも向ってくるだろう、それも複数で。
「ひるむなぁ!!!」
団長っぽい奴の一喝、ほらみたか。
今度は、複数、約四が、取り囲むように、ニアコに迫る。
「あはっ!、にゃっああ!」
またもバックステップ、そして、その開いた隙間から、火中が舞い上がる。
混乱する敵に、一足で接近、ニアコが先ほどと全く同じ、三段付き。
まあ、これしか、実戦に耐える、接近攻撃がほとんど無いのは、内緒の内緒だ。
「クソ、、あの後ろの小僧も、ねらえぇ!!!」
さきほどまで、なにか俺を観測士、まあ間違ってないが、思っていた奴らが、俺も狙いに来る。
今の俺は、ただ分厚い本を持っているだけだ。
だがこの本が、凶悪な代物なのは、今ので伝わっただろう。
無詠唱、無反動、無速度。
魔術書を魔道具として、直接的な魔術回路として扱う、上級の魔術師の技なのだなぁ~これが。
「っふっふ、おそいおそい、よわいよわいっ」
涼しい顔で、バックステップ。
そして、分厚い本を様々に光り輝かせながら、普通に反則チックな威力の魔法をお見舞いする。
具体的には、バックステップで離れた距離の間に、炎の壁を出現、追撃をかわし。
その間に、こちら側で氷のブリザードを形成、炎の壁が無くなった瞬間に、お見舞いす。
そして、それでも抜けてきた奴は、あらかじめ仕掛けておいた、ツタの応酬で絡め取る。
それでも無理なら、至近距離でライトニング、どこからともなくピンポイントで雷が落ちてズタボロにする。
他にも、毒の霧や水鉄砲、闇の波動や何やら、クソ反則な感じの魔法の力、てかマジでつええよ魔術師様。
「埒があかん、あっちの小僧を俺が仕留める、お前達はスナイパーを殺れぇ!」
「ふはは、殺せとは、おだやかじゃないなぁー!」
俺はとりわけ強力な団長、それが至近距離に迫る前に、決めの技を放つ事にする。
「特権発動”特一級・白光聖秘術・秩序なる聖激=付加リバースクルダーク・混沌なる輪廻の理”」
魔術書が黄金の禍々しい極光を放ち、目がチカチカするほどの、なんだコレは、変な現象を引き起こす。
そして同時に、背後の空間に、ぞっとするほど巨大な、巨大な、十字架が幾十本も現われ顕出する。
十字架は聖なる光を辺りに散りばめながらも、その周りに毒々しい暗黒のオーラを纏い、
その矛盾する力は一つに混ざり合い、酷く凶悪で強烈な、純然たる強さを宿しているように見えた。
「まあいい、相性が安定しているうちに、全弾解放、貫けるだけ貫けぇ!」
俺の宣告の後、後方に漂っていた十字架群は、もうれつな勢いで、俺の左右を駆け抜けて。
たった一人の敵を蹂躙する。
俺の視界では団長が、剣を掲げて、それを受けようとしたが、あまりに無謀、
見る前から結果は分かりきっていた。
だが煙が晴れて、既に真っ赤な血煙が、辺りに充満していた、案の定、影すら残らず、団長は消滅した。
「ああああああああぁ!!!団長がぁああああ!!」
「おわりだ! 終わりだぁ!!!」
俺のその、恐ろしすぎる一撃を見た敵は、既に恐慌を越えて混乱し、逃げ惑った。
それをニアコが、順々に狙撃、そして一匹残らず始末する。
「終わったかぁ」
最初は五百人もいた大所帯、それを俺とニアコは、たった二人で、瞬く間とは言わないが、壊滅させたのだ。
ニアコが最後の一人に狙いを定めて、ぴこりろりん! 銃のスキル経験値が上がった音と共に銃の引き金を引き、銃声を響かせたのだった。




