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第四話‐裏八坂原ワールドにて

 

 

 夕焼けを見てから、数日後。

 ここはゲームの世界、VRMMOという成りの、もう一つの学校世界。

 

「観測者特権により、この学校は、今日から完全に、俺達のモノとなった」


「よかったわね」


 ナルデ以外、全員欠席、というより、さぼりか?


「さて、やっと、学校という領域だけは、支配、取り返せた。

 これからは、もっとスピードを上げて、世界の異常を白日の下に晒すから」


「そうね、それがいいと思うわ」


「食いつきが悪いな、テンション上げろよ、特異点だろう?」


 ナルデは、はふぅと、風船が抜けたような溜息を零す。


「無理言わないで、わたしって、基本的にローテンションなのよ?

 だいたい、貴方が定義したじゃない、わたしは特異点じゃない、だから、そういうことで」

    

「駄目な奴だな、全然、興味がソソラレナイ奴だ。

 ばーかばーか。

 もういい、でも、これを聞いて、テンション上がらないかな?」

 

 訝しい瞳、ぜんぜん期待していない人の目だった。


「なんと、この世界には、上位世界が存在することが明らかと成った」


「はあ?」


「はあじゃない、上位世界だ」


「ちょっと、上位世界って、一体何? 聞いたことも無い、ってことにする」


 ってことにする、って何だ、まあ、いい俺は説明した。


「観測者は、世界の異常を排する、それは解明し明らかにする、ということだ。

 その過程で、ブラックボックス、これは世界の果てって意味だ。

 そこに対して、解明を続けていた。

 そしてついこの前、解明が完了し、その世界の果てが、裏八坂原ワールド、それ自体と、成った」


「はあ、此処が、上位世界?」


「そうだ、だから、此処を支配し、占領することが、異常の解明とイコール、そういうことになったから、よろしく」


 そこは、紛れもなく、新世界だった。

 見るもの全てが、未知に溢れて新鮮で、爆発的な爆縮を巻き起こす、絶大なるフロンティア。

 情報量とか、そういうので表現不可能な、言うなら特異点だ。


「特異点の、付加価値が無くなったな、ふっふ」


「なにそれ、嫌な感じだわ、わたしはわたしなだけで、革新的に無上に意味ある存在だわ」


 そんな訳が無い、おそらく、たぶん、きっと。

 観測者は、この世界を俯瞰する、神の目だ。

 新世界も、既に攻略が、認識の段階で済んだ。

 俺は底辺から天辺まで、情報という情報を取り込み、果てなく得続ける存在だ。

 しかし、上位世界は、攻略の完全完了と共に、さらに上が発見され続ける領域だ。

 認識の瞬間に、無上に情報処理、演算が出来るほどの、果てしない上位存在でも、

 認識の次に、タイムラグが挟まれて、認識の手間が掛かると、どうしても限界がくる、

 世界は、その全貌を隠してしまい、見通せない。

 もちろん、これを解決する方策が、現在をもって、研究され、既に確立は絶対確実視なのだが。


「まあ、時間潰しだな、そこら辺をぶらふらしようか。

 もしかしたら、神掛かり的な幸運で、なにか見つかって、巡り合うかも」


「そんな都合よく、在る分けない、貴方は世界を舐め過ぎているわ」


「世界なんて、舐めるために、あるもんだろう。

 ほら、アレを見てみるんだ」


 俺は指をさす。

 そこには、この上位世界を掌る、神のようなアイテムが落ちる。

    

「人、ね」


「ああ、人だ」


 上位世界の、情報保管庫。

 存在が、その集約収束点に選ばれるのは、珍しい事例だったが。

 これを手に入れて、支配すれば、上位世界を攻略する上での、認識タイムラグはなくなるのだ。

 が、俺はソレをスルーした。


「はぁ、駄目だな、この世界は、どうやらループ構造のようだ、いらないな」


 世界には、様々な構造がある。

 その中でも、ループ構造は、一番駄目なパターンだ。


「ふーん、そんな事だろうとは思ってましたよ、

 凄く詰まらない感じ」


 ローテンションは、ローテンションなまま、沈滞傾向になったようだ。

 

「世界は、やはり掌に収まる程度に、ミニチュアだな、全然駄目だ。

 どれだけ情報量が多くても、そんなモノに価値は無い。

 なぜなら、この世界には既に、莫大な情報量が存在する。

 する以上、新たにどれだけ、新規で、以前を増した情報量が発掘されても、大して意味が無い。

 価値がない事に、幸福は含有されないという、そういうわけだろう。

 俺は、異常を探しているんだ、情報を探しているわけじゃない。

 この世あらざる、真に不可思議で、歪な、圧倒的で絶対的な、そんな、何かを」


 演説していると、袖をくいくいと、引っ張られる。


「もしかして、その子が、異常なんじゃない?」


「違うだろう。

 こんな無口、無表情、無感情チックな、見目愛玩動物が、そんな訳ない」


 俺は演説中も、ずっと頭を撫でてあげていたのだが、どうしてだろうか?

 俺は基本的に、優しくない、すべてに興味ない、無干渉主義の、絶無の観測者なのになぁー。


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