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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
977/4820

心の闇

《サイド:近藤悠理》


…は、はは…っ。


何よ、それ?


そんなの理由になってないじゃない。


ただ何となく気になったから?


ただ何となく私が無理をしてるように見えたから?


ただそれだけの理由で、私を好きになったって言うの?


何よそれ…。


ホントに…


馬鹿じゃないの?


そんな理由で命をかける必要なんてないじゃない?


そんな理由で私を守る必要なんてないじゃない?


それなのに…。


どうしてそんなに優しくしてくれるのよっ!


「私には、理解できないわ。」


今まで誰かに優しくしてもらったことなんてないから。


だから慎吾の考えが私には理解できなかったのよ。


なのに…ね。


それなのに…っ!


慎吾の言葉のせいで、私の心は大きく揺れ動いてたのよ。


これは、何?


この想いは何?


分からない。


どんな言葉で表現すればいいのかが分からない。


だけど。


だけどこれがきっと。


…幸せっていうのかな?


今まで誰にも知られたくなくて、ずっと隠してきた想い。


今まで誰にも嫌われたくなくて、ずっと言えずにいた想い。


それなのに…。


それなのに…っ!


私の苦しみに…


慎吾は気付いてくれていたのね。


それがすごく嬉しかった。


私の心の闇を感じても、

それでも好きって言ってくれる気持ちがすごく嬉しかったのよ。


この気持ちが愛されてるっていう感じなのかな?


はっきりとは言い切れないけれど。


たぶん、そうなんだと思う。


…だけど。


どうなのかな?


私にはわからないわ。


誰かに必要とされたことがないから。


誰かに愛された記憶がないから。


だからわからないの。


愛って何?


愛情って、本当にあるの?


分からない。


あるのかもしれないし、ないのかもしれない。


「だけど、もしも本当にあるのなら…。」


愛情という言葉が実在してるのなら。


もっと早く欲しかったと思う。


慎吾がどうこうとかじゃなくて。


もっと根本的な部分として。


私のことを何も知らない誰かじゃなくて。


私のことを知ってる身近な人からの愛が欲しかったの。


…お父さん。


…お母さん。


…お兄ちゃん。


…お祖父ちゃん。


他の誰よりも一番身近にいる家族から愛されたかったのよ。


私の心を苦しめてる闇は、

ただただ純粋に『家族への想い』だから。


お父さんやお母さんに、

愛してるって言ってもらいたかっただけなの。


そして出来ることなら、

生まれてきてくれて良かったって思ってもらいたかったの。


ただそれだけなのよ。


何よりも純粋に『愛』を求めたこと。


それが私の願いなの。


なのにね。


その願いは叶わなかったわ。


私には与えてもらえなかったのよ。



『魔術師としての実力がない』



ただそれだけの理由で家族からの愛を失ったの。


必死に勉強もしたし。


必死に努力もしたわ。


だけど、結果が出せなかったのよ。


そのせいで…。


私は家族から見放されてしまったの。


どれだけ望んでも手の届かない願い。


お父さんやお母さんに私を見て欲しいと思う願いが、

あっさりと切り捨てられてしまったのよ。


その瞬間から私は絶望を忘れるために心を閉ざしたの。


もう二度と傷つきたくなかったから。


もう二度と悲しい思いをしたくなかったから。


現実を受け入れるのが嫌になって。


自分の気持ちを隠して。


本当の『感情』を殺したの。



最初から愛なんて存在していないのなら。


無理に欲しがる意味はないわよね?



最初から必要とされていないのなら。


自分を主張する意味もないわよね?



誰も私を必要としないのなら。


私も私を必要としないわ。



誰も私を認めてくれないのなら。


私も私を認めようと思わないわ。



そんなふうに思い続けて…


そんなふうに自分を追い込み続けて…



私は私の心を隠してきたの。


心を閉ざすことで、

私は私の心を守ろうとしていたのよ。


それが私の心の闇なの。



今まで与えられることのなかった両親からの愛を求め続けて。


兄弟にも見放されて祖父母からも見放された私の絶望なの。



毎日をただひっそりと過ごして、

与えられない愛を求めながらも何も言えずにいた葛藤かっとう


そして孤独だけが支配する心。


いつしか私は本当の笑顔を忘れてしまって、

心からの笑顔も失っていたわ。


辛い現実に向き合う為に。


無理に心を強く保とうとしていたのよ。



無理に強がることで。


心の弱さを見せないことで。



必死に生きていこうとしていたの。



そんな私の悲しみに…


慎吾は気付いてくれたみたいだったわ。


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