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THE WORLD  作者: SEASONS
4月18日
951/4820

関係ありません

《サイド:美袋翔子》



「「「「「いたぞーーっ!!!!」」」」」


「「「「「魔術師だっ!!!」」」」」



南側から迫り来るのは…アストリア軍?


まだ…いたの?


山岳地帯の防衛を行っていた他の部隊の兵士達が、

私達のいる戦場に接近しつつあるみたいね。


「…まずいわ…っ!」


焦る理事長の足元にアストリア軍の放った矢が突き刺さる。


『ドスッ!!』と、地面に突き刺さったのは鉄の矢よ。


人を殺せる凶器。


その矢に気付いた瞬間に、

私はアストリア軍へと視線を向けてた。




「まだ、来るのね…」


真哉が一掃してくれたのに!


真哉が命懸けで私達を守ってくれたのに!



「許さない!!真哉を傷付けたアストリアを…私は絶対に許さないっ!!」



怒りを言葉にしながら立ち上がる。


今の私はもう憎しみしか感じないからよ。


瞳は憎悪に満ちて殺気が漂っているでしょうね。



「許さない!絶対にっ!!」



真哉の遺体を庇うために前に進む。


もう二度と真哉の体を傷つけさせはしないわ!


もう二度と真哉を犠牲にしたくないのよっ!!



「これ以上、真哉を苦しめないでっ!!」



戦う決意を示して立ちはだかる。


そんな私を理事長が呼び止めようとしてた。


「無理よ翔子っ!数がどうとかそんな問題じゃないのよ!?魔力を失った私達では抵抗すら出来ないわっ!!」


魔力?


それが何?


魔力がないから戦えない?


そんなの誰が決めたの?


「関係ありません」


魔力があるとかないとか、

そんな理由で真哉を置いて逃げられるわけがないじゃない。


私を守るためになら死んでもいいって思ってくれた真哉を放って置けるわけがないじゃない!



「そういう問題じゃないんです」



真哉を守りたい。


ただそれだけなのよ。


「真哉を傷つけさせたくないんです」


そのためにはアストリア軍を全滅させる以外に方法がないの。


「真哉を苦しめようとするアストリア軍を追い払うだけです」


「だから、それが無理だって言ってるのよ!どうやって戦うつもりなの!?魔術はもう使えないのよ!?」


立ち向かおうとする私を必死に引き止めようとする理事長だけど。


私は理事長の制止を振り切って、

真哉の盾になるために自分自身の体を危険にさらすことにしたわ。



「これ以上、真哉の体を傷付けさせはしないわっ!!!」


大声で叫ぶ私の体を掠めて、

数本の矢が周囲の地面に突き刺さっていく。


その後にも続々と地面に突き刺さる鉄の矢。


その内の一本が…


『ドスッ!』と、倒れる真哉の体に突き刺さってしまったのよ。



「真哉っ!?」


慌てて真哉の体から鉄の矢を引き抜く。


だけど、次々と降り注ぐ矢の雨が私達にも襲い掛かってきたわ。


「くっ!ボム・ウイン!!!」


初級の風魔術で矢を散らしてくれた理事長が私の腕を掴む。


「逃げるわよ、翔子!!」


急いで逃げ出そうとする理事長だけど。


私は理事長の腕を振り払うことにしたわ。


「ちょっ!?翔子!?」


戸惑う理事長に精一杯微笑んでみる。


「理事長は逃げてください。私は、ここに残ります…」


「なっ!?何を言ってるのよ翔子!?ここに残れば確実に死ぬわよっ!!」


必死に私の腕を掴みとろうとする理事長だけど。


私は微笑みながら理事長に別れを告げることにしたのよ。


「真哉を一人には出来ません。真哉の想いに応えてあげることは出来ないけれど…。だけどせめて…せめて傍に居てあげたいんです」


「ば、馬鹿っ!!一体、北条君は誰の為に戦ったと思ってるの!?あなたを…翔子を守りたくて…その為に北条君は戦ったのよ!!」



…わかってる。


それぐらいわかってる!!



だけど。


だからって真哉を一人には出来ないの!


私を守るためなら死んでもいいなんて思える馬鹿を残して逃げるなんて私には出来ないわ!


そんなふうに真哉を見捨てられるような人間なら、

真哉だって最初から私を守ろうなんて思わなかったはずなのよ。


「真哉を犠牲にして私だけが幸せになんてなれません。例え生き残って総魔の傍に居られたとしても…。きっと私は心の底から喜べないと思うんです」


「だからと言って死んでいいわけじゃないわ!!それこそ北条君の想いを無駄にすることになるのよ!?」


必死に説得を続ける理事長だけど、私の気持ちは変わらないわ。


真哉以外の意見では変えられないのよ。


「死にたいとは思いません。出来ることなら生きたいと思います。だけど、最後まで逃げることだけはしたくないんです!」


「逃げないと死ぬのよっ!?」


迫り来るアストリア軍を視界に入れながら、理事長は私の説得を続けてくれてた。


「翔子が生き残ることが北条君の願いなのよ!!その願いを…その想いを…無駄にする気なのっ!?」


必死に言い聞かせようとする理事長だけど。


それでも私は納得しなかったのよ。


「真哉が自分の『想い』を貫いたように、私にも貫きたい『想い』があるんです!」


生死よりも、もっと重要なことがあるの。



「自分の想いを曲げて生き延びるよりも、自分の想いを貫いて死んだほうがまだましです!」



「ああ~もうっ!!!」


自分の思いを伝えてみたけれど。


理事長は力付くでも私を連れ去ることを選んだみたいね。


「言い訳はあとで聞くわ!!とにかく今は逃げるわよっ!!」


強引に腕を引っ張る理事長だけど。


その必死の想いを私は拒絶し続けたわ。


理事長の手を振り払ってから、もう一度願ったのよ。


「理事長だけ逃げてください。そしてもしも再会することが出来たなら、総魔を助けてあげてください」


真哉が私の無事を願ったように。


私は総魔の無事を願いたいと思うの。


「そして、伝えてください。私も真哉も精一杯戦ったって…」


「嫌よ!そんな役目は断るわ!!翔子を置いて行けるわけがないでしょ!」


必死に説得を続けようとする理事長だけど。


その間にもアストリア軍は迫っていたのよ。


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