父として
《サイド:琴平重郎》
…さて。
一体、何が起きているのでしょうか?
地震の発生からすでに10分ほどが過ぎているのですが、
今でもまだ影響を受け続けているマールグリナの被害は甚大でした。
町の各所で古い建物が倒壊しているようで続々と救援要請が出ているからです。
さらには学園そのものも影響を受けてしまったようで、
気候操作用の設備が停止して広範囲魔術であるフラワーが消失してしまったようですね。
幸い天候は快晴ですので特に困ることはないのですが、
もしも雨が降り出したら学園の校庭を緊急避難区域として開放するのも難しくなるでしょう。
雨で濡れた校庭など、体を休めるにふさわしい場所にはなりえませんからね。
天候が崩れる前に、結界の修復は急ぐべきでしょう。
それらの様子を学園長室から眺めてから北の空に輝く光に視線を向けてみました。
「あの方角は砦のある辺りですね。これほどの大地震となれば間違いなく兵器が発動したということでしょう。だとすればこの地震が兵器の力ということでしょうね」
終わることのない地震の影響の直撃を受けているマールグリナの町の各所では
数え切れない程の悲鳴と混乱状態に陥った人々の叫び声が響いています。
「この町でさえもこの有様なら、あの場所での被害はもはや想像も出来ません」
地震による地割れと地盤沈下。
町の各所で発生する被害は重大です。
…ですが。
離れた地でこの状況であるなら直撃を受けた砦は『崩壊』か、
あるいは『粉砕』していると考えるべきではないでしょうか。
残骸は残しているかもしれませんが間違いなく『壊滅』しているはずです。
「せめて愛里が無事でいてくれればいいのですが…」
友軍の安否も気になりますが、
やはり一人の父親として娘の安否が気になってしまいます。
娘を戦場へと送り込んでいるのです。
父として誰よりも娘の『生還』を願いました。




