街道を迂回
《サイド:栗原徹》
「うーん。困りましたね」
天城さんと別れて王都を離脱したあとで、
僕は一人きりで砦を目指して街道を南下していました。
すでに太陽が昇り。
明るくどこまでも見渡せる雄大な草原は遥か彼方まで続いています。
所々で林もあるのですが、
森と言えるほど大きな範囲ではないので身を隠すには不向きですね。
だからこそ、とも言えるのですが。
街道を走り続ける僕の視線の先で、
最も警戒していたアストリアの軍隊を発見してしまいました。
「やはり街道は無理ですね」
前方には進軍を続けるアストリアの部隊がいます。
王都からの増援部隊でしょうか?
昨日出発したにも関わらず、
王都から3時間程度の付近にいるというのは出陣に手間取っていたということでしょうか?
ざっと見ても万単位の軍勢です。
招集から出陣までにそれ相応の時間がかかるのは当然かもしれません。
あるいは夜間の行軍を避けて野営していた可能性もありますね。
共和国軍の強襲を恐れていたかもしれませんし、
そうでなくとも徹夜での行軍は疲労を蓄積させてしまうでしょうから士気の低下は否めません。
ある程度万全な状態で軍を進めるためには休息も必要でしょう。
そんなふうに推測しながら、
僕は進行方向を変えて街道から外れることにしました。
「ひとまず街道を迂回して砦を目指すしかありませんね」
安全を重視して、別の道を探しながら砦に急ぐことにしました。




