王都撤退
《サイド:栗原徹》
「いたぞーーー!!!」
「追えーーっ!!!」
背後から迫り来るアストリア軍。
王城を脱出した僕達は、
アストリア軍を迎撃しながら王都の街中を駆け抜けている最中です。
前方を天城さんが守り、
後方を天使に守らせながら南門を目指す僕達。
その前方には南門を防衛する兵士達が立ちはだかっていました。
「逃がすな!門を封鎖しろっ!」
兵士を集めて総魔と徹の逃走を阻止しようとするアストリア軍ですが、
天城さんを止めるには絶対数が足りていません。
「穿て!」
天城さんが指示を出した瞬間に、
天使が放つアルテマが南門に直撃して門番の兵士達もろとも吹き飛ばしました。
一気に瓦解する南門。
その周辺にはアストリア軍の死体が積み重なって、
生き残った兵士達の苦悶のうめき声が響いています。
「このまま駆け抜けるぞ!」
「はい!」
全力で南門を駆け抜けた僕達は王都の脱出に成功しました。
…ですが。
そこで天城さんは足を止めてしまいます。
僕を逃がす為に南門に残るようです。
「俺が軍を足止めする間に、徹は先に撤退しろ!」
「はい!分かりました!!」
僕がここに残っても出来ることは何もありません。
むしろ足でまといになるだけです。
その事実がわかっているからこそ、
素直に王都から離脱することにしました。
「共和国軍との合流を目指します!」
「ああ、頼む」
即座に撤退する僕の姿を見送ってから、
天城さんは追撃部隊に振り返ったようです。
「ここから先は通さん」
崩れた南門で立ち塞がる天城さんの王都での最後の戦いが始まりました。




