ただ一つの誓い
《サイド:三倉純》
う~ん。
愛里ちゃんを死なせたくないのよね…。
逃げて欲しいと思う気持ちがあるんだけど、
愛里ちゃんを悲しませたくないと思う気持ちもあって、
複雑な心境になってしまったわ。
どうもこういうのは苦手なのよね…。
ずっと復讐のことばかり考えてきて誰かを守りたいなんて思ったことがなかったから、
どう接すればいいのかが分からないのよ。
だけどきっと。
ここで愛里ちゃんを除外しようとしても愛里ちゃんは納得してくれないでしょうね。
そんな気がしたわ。
「本当に行くの?」
「はいっ!」
「………。」
言葉に迷って戸惑う私に栗原君が声を掛けてくる。
「皆で行きましょう。そして皆で生きて帰りましょう」
ああ、うん、まあ、ね。
それが一番なんだけどね。
でもね?
それが出来そうにないから話し合ってるわけよね?
「全員が生きて帰れるなんて、たぶん無理よ?」
「たぶん、であって、絶対ではないですよ」
そういうのを屁理屈っていうんじゃないかしら?
だけど覚悟を決めた栗原君を説得するのも大変そうに思えるわ。
すでに愛里ちゃんの参加を認めてしまっている栗原君に、
私はもうそれ以上何も言えなかったのよ。
だから私は誰にも聞こえないような声で、
自分自身に宣言することにしたのよ。
「例え私が倒れても、愛里ちゃんだけは守ってあげるわ」
それが私のただ一つの誓い。
たった一人。
心から守りたいと思えた愛里ちゃんのために。
私は私の命をかけようと思うの。
「一緒に行きましょう。生きて…帰る為に」
愛里ちゃんに手を差し延べると、
愛里ちゃんも私の手を握り返してくれたわ。
「…純さん…」
私の手を掴んでから、
愛里ちゃんはゆっくりと立ち上がったのよ。
「皆で揃って…帰りたいです」
ええ、そうね。
それが一番よね。
愛里ちゃんの想いを胸に秘めて、
精一杯の笑顔を浮かべてみせる。
「一緒に帰りましょう」
愛里ちゃんの涙を拭ってから問いかけることにしたわ。
「覚悟は良いわね?」
「はい!覚悟はずっと出来ています!」
泣き笑いの表情で力いっぱい宣言する愛里ちゃん。
それぞれの想いを言葉にして、
私達は全員で戦う覚悟を決めたのよ。
そして。
それぞれの想いを胸に、
私達は最後の作戦会議を始めたわ。




