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THE WORLD  作者: SEASONS
4月17日
844/4820

潜入成功

《サイド:栗原徹》


朱鷺田さんが出掛けたことで一人きりになった僕は、

時計の針を眺めながら朱鷺田さんの帰りを待つことにしました。


「みなさん無事に合流出来れば良いのですが…」


どうなのでしょうか?


僕も何かするべきでしょうか?


色々と思うことはありますが、

だからと言って僕でお役にたてそうなことが思い浮かびません。


そもそも僕は医者の見習いという立場でしかなく、

こういった潜入作戦でお役に立てることなんてほとんど何もないのです。


それでも今回の作戦に参加したのは少しでもみなさんの生存率を上げるために回復魔術で支援するつもりでいたのですが、

今の所はまだそれほど大きな戦闘もないですし、

重傷を負うような事態にも陥っていないので特に活躍できるような場面はありません。


そのせいでみなさんの足を引っ張っているという現実を感じていました。


僕にも何か出来ることはないでしょうか?


下手に動けば余計な問題を起こしかねないので勝手な行動をとるつもりはありませんが、

ただ待っているだけというのも気が引けます。


少しでもお役に立てれば…と思うのですが、

どうすればいいのかが分かりません。


みなさんの無事を心配しながらも、

ただただ待ち続けることしか出来ないという状況は正直に言って気が滅入りますね。


このままじっとしているだけというのも落ち着かないので、

せめてこの場所で出来ることは何かないでしょうか?


暇つぶしと言ってはなんですが、

更衣室のロッカーを全て調査してみましょうか?


まだまだ確認できていないところは沢山あります。


そう思って一通りの調査を始めて見たのですが…


残念ながら気になるようなことは何もありませんでした。


予備として回収できそうな服もなかったので、

天城さん達が変装するのは無理のようです。


「使えそうなものが何もないですね…」


おそらく使用済みの服や白衣は洗濯のために別の場所にあるのでしょう。


夕方あたりに洗いに出した服が、

翌日の朝に綺麗になって戻ってくるという流れでしょうか?


今は深夜ですので職員の出入りは少ないでしょうし、

着替えが少ないのは当然かもしれません。


それでも予備が発見できたのは緊急時用か、

作業の過程で汚れてしまった時に着替えるために置いてあったのだと思います。


あとは単純に半数程度のロッカーに鍵がかかっていましたので中を調べることができませんでした。


おそらく使用中なのでしょう。


ざっと見て20箇所ほどのロッカーが使われているようですので、

その同数か、やや多いくらいの職員が今この研究所にいるということになるのではないでしょうか?


受付にいた女性や研究所の清掃員などを含めても30人には満たないかもしれません。


もちろん研究所の外部にいる警備兵達を数に含めるとその数は一気に数倍になるわけですが。


ひとまず、職員だけで見れば20名程度と判断しておいて問題ないでしょう。


…となれば、必然的に考えなければならない問題が出てくるのですが。


もしも研究所の職員が入って来た場合にはどう対処すればいいのでしょうか?


朱鷺田さんと同様に新人のふりをするべきでしょうか?


………。


どうでしょう?


上手くごまかせる気がしません。


そもそも深夜の更衣室に独りきりという状況で不信感を感じさせずに乗り切る自信なんてありません。


どう考えても僕の存在は不自然でしょうし。


話術で乗り切れると思うほど精神面も強くありません。


なので、もしも誰かがやってきたら僕はどうするべきなのでしょうか?


敵地で独りきりという状況のせいで色々と考えてしまうのですが、

そのせいで気持ちが張り詰めていたのかもしれませんね。


『コッ…コッ…コッ…コッ…』と、

複数の足音が聞こえてきたことで一気に錯乱状態に陥りそうになってしまいました。


「うわぁ…。誰かが接近してますね。」


冷静に落ち着いて物事を判断できてさえいれば何も慌てる必要はなったと思います。


ですがこの瞬間の僕は魔力の波動を感知するという基本的な部分を完全に忘れてしまっていました。


「朱鷺田さん達であれば良いのですが…」


祈りを込めるように呟きながら足音の人物を警戒して室内の奥へと身を潜めました。


沢山あるローカーのおかげで身を潜める場所には困りませんが、

奥まで来られてしまったら逃げ道はありません。


もしも見つかってしまった場合は戦闘に…というよりも拘束のために戦うしかないでしょう。


そんなふうに考えている間にも開かれる扉。


足音の主は迷うことなく室内へと歩みを進めてきます。


職員なのか、朱鷺田さん達なのか?


そのどちらなのかを息を潜めて窺っていると。


「栗原君。おられますか?」


「あ、はい。ここにいます」


呼び掛ける声が朱鷺田さんのものだと判断できたことで急いで姿を見せました。


少し足早に入口に向かってみると、

朱鷺田さんの背後に天城さん、三倉さん、愛里ちゃんの3人の姿が確認できました。


「皆さん、ご無事のようですね」


全員の無事を確認できたことで微笑んでみると、

僕の笑顔を見た朱鷺田さん達も微笑んでくれました。


「ここまでは何とかね~」


笑顔で答える三倉に続いて…


「徹さんも無事で良かったです」


愛里ちゃんも喜んでくれています。


そして最後尾の天城さんが扉を閉めたことで、

僕達は無事に合流を果たしました。


研究所の更衣室。


ここまでの潜入に成功したことで、僕達は揃って安堵の息を吐きました。


「これで最初の問題だった潜入に関しては騒ぎにもならず。全員揃って無事に成功ですね」


作戦成功を喜ぶ僕に続いて、

愛里ちゃんが朱鷺田さんに話しかけていました。


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