龍脈研究所
《サイド:朱鷺田秀明》
それぞれに行動を開始して各地での偵察が進む中で、
私と三倉さんは問題の研究所へと接近しました。
路地の隙間からそっと視線を向けてみます。
わりと新しいと思われる研究所にはアストリア軍の鎧を身にまとう兵士達が警備を行っているのが見えますね。
「あれが研究所ですか?」
「ええ、そうよ。見るからに怪しいでしょ?」
小声で話し合う私達の視線の先には数え切れないほど多くの軍隊が厳重な警備体制を整えている大きな研究所があります。
正門に掲げられた研究所の名前。
そこには確かに『龍脈研究所』と記されていました。
「何の研究所だと思う?」
さあ、何でしょうね?
「私にもわかりませんが、これほど警備が厳重な施設は他にはなかったように思います」
「でしょ?でしょ?だからこそ怪しいと思うのよね~」
確かに違和感はありますね。
これほどの警備なのです。
ただの研究所ではないでしょう。
「研究所に軍隊ですか、あれ程の厳重な警戒体制をとらせている『理由』が何なのか?調べてみる価値は十分にありそうですね」
「それで、どうする?」
…そうですね。
「ひとまず研究所を一通り観察して、侵入出来そうな場所があるのかどうかというところから調べてみましょうか」
「ええ、そうね」
私の提案を受け入れてこれた三倉さんが行動を開始しました。
「偵察…開始!」
気合を入れて路地を出る三倉さんは、
通行人に紛れながら時計回りに研究所の周りを歩き始めます。
その動きはとても自然で警備兵の監視も軽々と回避していますね。
素晴らしい行動力です。
これほど自然に他国の首都に溶け込める三倉さんは本当に素晴らしいと思います。
あまりにも自然すぎて、油断すれば見失ってしまいそうなほどですからね。
「これは気を抜けませんね」
三倉さんの足を引っ張るような真似はできません。
私も上手く流れに乗れるように頑張りましょう。
路地の影から三倉さんを見守っていた私は、
路地に出てからも三倉さんとは反対方向に向かって歩き始めました。
「さて。久々の諜報活動ですが今回は成功させて見せますよ」
5年前の失敗は繰り返しません。
もう二度と後悔はしないと誓ったのです。
今回は必ず作戦を成功させてみせます。
慎重かつ堂々と警備兵達の視線を回避しながら、研究所の観察を始めました。




