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THE WORLD  作者: SEASONS
4月17日
812/4820

平和な街並み

《サイド:琴平愛里》


私達は今、アストリアの王都にいます。


その街並みはとても賑やかで、

とても平穏に見えました。


「こうして見ていると、とても戦争が始まるとは思えないわよね~」


呟いた純さんの言葉は私も感じていることです。


「そうですよね。」


とても平和で普通の日常。


そんな気がするんです。


「この町の人達はみんな知ってるのかしら?戦争のことを…」


あまりにも平和すぎることで疑問を感じながら歩みを進める純さんですが、

周囲の状況からは戦争の雰囲気は感じられません。


朝から無邪気にはしゃぎ回る子供達や家事に勤しむお母さん達。


そして仕事に出かけていく男性や忙しそうに馬車を走らせる商人の姿が各地で見えます。


もちろんのんびりと世間話を始めている人達もいるようです。


共和国とアストリアでは異なる習慣があるとは思いますが、

それでもどう見ても平和でごく普通の朝の景色としか思えません。


町の人達の表情に怯えや不安は感じられませんし。


どこを見ても緊迫した雰囲気は欠片も感じられないんです。


ただ一つの例外を除いて、ですけど…。


「気のせいでなければ、昨夜よりも『軍の数』が増えていますね」


朱鷺田さんの言葉を聞いて周囲を見回してみました。


確かに軍の兵士っぽい方々が各地に見えます。


朱鷺田さんの言葉通り。


見渡す限りどちらを向いても必ずと言って良いほど

軍服を着込んだ巡回兵達が列を成しているのが見えるんです。


夜の間は監視の目を逃れることが出来ていたのであまり気にしていなかったのですが、

徐々に明るさを増していく街中では監視の目から確実に逃れることは難しいと思います。


特にマールグリナ医術学園の『制服』を着ている徹さんと私は異質に見えるかもしれません。


そんな不安を感じていると、不意に徹さんが先頭に立ちました。


「ありました!あの家です!」


指差す徹さんの視線の先には明らかに無人と思われる古ぼけた一軒家が建っています。


あちこち壊れていて、今にも潰れてしまいそうな廃屋です。


その中に入るために。


私達は人目を警戒しながら内部に侵入しました。


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