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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
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恋愛相談

《サイド:美袋翔子》


ふう…。


静かで幸せな時間って身近にあるものなのね~。


お母さんと話をする時間は結構楽しかったわ。


こういうのを居心地がいいって言うのかな?


そんな和やかな雰囲気の中で、

ついにお母さんが問い掛けてきたのよ。


「…で?」


「ん?」


りんごジュースを飲み終えた私に、お母さんは質問を続けてくる。


「話ってなに?」


「あ~。そのことね」


空になったコップを置いてからお母さんと向き合う。


色々と悩んだけど、こういうのは素直が一番よね?


そう判断して話し出すことにしたわ。


「まあ、色々と思うことがあるのよ」


「ふふっ。聞いてあげるから言ってみなさい」


優しい眼差し。


そんなお母さんの瞳を見つめながら話してみる。


「私ね。好きな人が出来たの」


「あら!あらあら!」


楽しそうに微笑むお母さんは興味津々って感じだったわ。


流れ的に良い暇つぶしを見つけたって感じかもしれないけどね。


それでもとりあえずはちゃんと話を聞いてくれるみたい。


「今までずっと面倒だから彼氏はいらないって言ってたのに、どういう心境の変化なの?」


ん~。


心境の変化、なのかな?


娘の恋話に興味津々なのはいいけど。


無駄に元気なお母さんの笑顔を見ていると、何故かため息を吐きたくなるわね。


「気になって仕方がないというか、側にいられるだけで幸せというか…まあ、そんな感じ?」


「あらあら」


私の説明を聞いたお母さんは呆れ顔になってた。


ちょっと期待はずれだった感じかな?


「何よそれ。まだ付き合ってるわけじゃないの?」


あぅ…っ!?


お母さんの指摘が直球過ぎて、顔を真っ赤にしてしまったわ。


「ち、違うわよ!まだ付き合ってるとかそんな…っ」


そこまで話を進められないというか。


総魔が気づいてくれないというか。


色々と事情があるのよっ。


それなのに。


恥ずかしがる私を見てたお母さんは楽しそうに微笑んでる。


「せっかく可愛く生まれたのに面倒な子ね~。力付くで押し倒しちゃえば良いのに」


んなっ!?


「なっ、何を考えてるのよっ!!」


「何って、恋の相談でしょ?」


それはそうなんだけど、

色々と間違ってるわよね!?


のほほんと答えるお母さんを全力で睨みつけてみる。


「これでも真剣に話してるんだけど?」


「私も真剣に答えてるでしょ?」


「どこがよっ!!」


叫んでみてみ、意味はないみたい。


のほほんと応えるお母さんの笑顔は崩れなかったわ。


「好きになったのなら全力で向き合わないと気持ちは伝わらないわよ?」


「そうかも知れないけど、何で突然押し倒すとかになるのよっ!?」


「それも一つの方法だと思わない?」


「だから、思わないって言ってるの!!」


全力で否定しておくべきよね?


…っていうか。


今ここにお父さんがいなくて良かったわ。


本気でそう思う。


自由過ぎる母の発言を聞いたら、さすがのお父さんも怒りかねないからよ。


ただまあ、お父さんがいないからこそ、こういう話題を選んだんだけどね。


それでもお母さんの発言は許容範囲を超えていたわ。


「もうちょっと普通に聞いてくれない?」


「まあまあ、それはともかく、相手はどんな人なの?」


あう…。


どんなって、聞かれてもね~。


説明するのって難しいわよね?


総魔を思い浮かべながら片っ端から答えてみる?


「私よりも凄い魔術師で、誰にも手が届かない絶対的な存在って感じ?あ、でも凄く優しくて、仲間思いっていうか、尊敬出来る人って感じでもあるんだけど…。何をしてもかっこよくて、何があっても対応出来ちゃうような天才…?」


う~ん。


色々とありすぎて、上手く伝えられないのよね~。


だけど次々と出てくる私の言葉をお母さんは幸せそうに聞いてくれてた。


「ふふっ。青春ね~」


なのかな?


今まで見せたことのなかった女の子の表情ってやつ?


恋する娘を眺めながら、お母さんは楽しそうに耳を傾けてた。


「それで?」


それから…え~っと。


「あ~。なんかもう、ありすぎて語り尽くせないわね…。」


言葉に悩んでしまったことで、お母さんが笑顔で話し掛けてくる。


「あらあら、翔子はその子のことが本当に好きなのね~」


ぁぅぅ…。


改めて言われてると照れるじゃない。


恥ずかしさのあまり、言葉を途切れさせてしまったわ。


「ふふっ。翔子も成長したわね」


「うぅ…。それってどういう意味よ?」


「意味もなにも、単純に嬉しいのよ。珍しく帰ってきたと思ったら、恋の相談なんて、めったに経験できることじゃないし。私も昔は翔子みたいに恋い焦がれた時期があるのを思い出したのよ。こういうのを時の流れというのかしらね?ついこの間まではまだまだ子供だと思ってたのに、翔子ももう大人なのね~」


あうう…。


そう言われると無性に恥ずかしくなるじゃない。


しみじみと呟くお母さんのせいで時の流れを感じてしまったわ。


でもまあ、確かにね?


以前ならこんなことはなかったと思うかな。


恋愛なんて自分にはまだ関係ないと思ってたから。


今まで一度もこういう話をしたことがなかったのよ。


それなのに。


今はここでこうしてお母さんと向き合って話をしてる私がいるの。


それもまあ、成長なのかもしれないわね。


そんなふうに思えた私をお母さんは楽しそうに見つめてた。


「ちゃんと想いを伝えたら私にも紹介してね。翔子の選んだ彼氏がどんな人なのか見てみたいから」


ぁぅ~。


無邪気に微笑むお母さんの言葉のせいで、

熱を感じるほど顔を真っ赤に染めてしまう。


そんな私の姿を見て微笑むお母さんはちょっぴり呆れてる様子だったわ。


「普段は遠慮なく言いたいことが言える癖に。恋愛に関してはまだまだ経験が足りないわね~。一体、誰に似たのかしら?」


「仕方ないじゃない。私だって初めてなんだから…」


言い返してみるけれど、

何故かお母さんは余計に嬉しそうだったわ。


「娘の初恋ね~。全力で応援したくなるわね」


………。


返す言葉さえ思い付かずにため息を吐いてしまう。


言わないほうが良かったかな?


なんてね。


若干後悔したからよ。


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