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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
712/4820

譲れない想い

《サイド:北条真哉》


…ったく。


大会が終わったと思ったら今度は戦争か。


「どうしてこうなったんだろうな」


学園内の人気の少ない道を歩きながら呟いてみたが、たいして意味はねえ。


何となく口にしてみただけだ。


でもな?


くだらねえとは思ってる。


それが正直な意見だからだ。


戦うのは好きだが、だからと言って殺し合いがしたいとは思わねえ。


そんなことの為に努力してきたわけじゃねえからな。


だから戦争が始まると聞いてもただただ面倒だとしか思えなかった。


出来ることなら参加したくねえ。


死ぬのが怖いとかそんなことは思わねえが、

率先して殺し合いに参加したいとも思わねえからだ。


このまま学園に残っていようかとも思うが…。


今の流れだと行くことになるんだろうな。


それが嫌だとは言わねえさ。


ただ。


参加したところで頑張ろうとは思えねえだろうな。


何か一つでも戦争に向かう目的があれば良いんだが個人的には何もねえからな。


総魔が生きようが死のうが興味はねえ。


命をかけて共和国を守ろうなんていう気持ちもねえ。


「つまらねえことになったな…。」


そんなふうに思いながら学園内をさまよい歩き続ける。


…って言っても。


どこかに行きたいわけじゃねえ。


もちろん会いたい人物がいるわけでもねえ。


何の目的も持たずに一人で学園内をさまよってるだけだ。


「何か面白いことがねえかな?」


さっさと寮の自室に戻っても良かったんだが、

今はまだしばらく外にいたい気分だった。


夜風に辺りながら、色々と考えたいことがあったんだ。


『これから』のこと。


そして『これまで』のこと。


それは総魔のことでもあるし。


龍馬達のことでもあるし。


戦争に参加する理由でもある。


とは言え。


戦争そのものに意識は向かなかった。


興味がねえからな。


もちろん無抵抗に侵略を許すつもりはねえが、

わざわざこっちから向かっていく理由もねえ。


ジェノスまで攻めてきたら抵抗はするが、

アストリアまで突撃する理由が思い浮かばねえってのが本音だな。


個人的な意見を言うとすれば魔術師狩りを経験している訳でもねえし、

アストリアに恨みがあるわけでもねえからな。


一人の魔術師として戦いに参加する事に迷いはねえが、

そこに命をかけるほどの価値が見いだせなかった。


『殺られる前に殺る』


それはそれで良いと思う。


それだけの理由で戦場に立っても間違いじゃねえだろう。


だけどな。


俺にはもっと他に考えるべきことがあった。


親友である龍馬のことでもあるし。


喧嘩友達の翔子のことでもある。


そして度々世話になった沙織のこともある。


『仲間の為』に命をかけて戦いたいとは考えていた。


自分が信頼する仲間を守るためなら全力で戦うことが出来るからな。


例えこの手を血で染めることになったとしても迷うつもりはねえ。


俺にとっての戦う理由であり、

『大義名分』でもある価値観だな。


『仲間を守る』の為なら人も『殺せる』と考えている。


実際にどうなるかはやってみなければ分からねえがそれでも思う。


両手を血で染めながら突き進まなくてはならない戦場。


そこは中途半端な覚悟では生き残れねえってな。


生きてこの町へ帰ってくる為に全力で戦い。


人を殺し続ける。


その罪悪感と向き合う理由を考えていた。


「まあ、結局は、そこに行き着くわけだけどな」


俺にとってただ一つだけ『譲れない想い』がある。


「見捨てるわけには行かねえだろ?」


どうしても守りたいやつがいる。


たった一つの命をかけてでも、

たとえ血を浴びて殺人者と化してでも、守りたいと思えるやつがいる。


決して自分には振り返ってくれないとわかっていても。


諦めることの出来ない想いがある。


例え最後まで叶わない願いだとしても。


捨てきれない想いがある。


諦めるということをしたくねえから。


いつか願いは叶うと信じ続けていたいから。


俺は決して心を折らねえ。


例えどれだけ離れようとも、

この手で掴みたい想いがあるから戦争に向かう覚悟を決める。


ただ一人。


守りたい人。


守るべき『彼女』の為に。


この手を血で染め上げる覚悟を決めることにした。


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