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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
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効率と現実

《サイド:鈴置美春》


はあ…。


どうして別々に来るのかな?


一緒に来てくれれば一回の調合で終わるのに…。


薬剤の出し入れはともかく、

器材の準備と片付けって結構面倒くさいのよ?


中途半端に薬品が残っちゃうと次の調合の時に困るから、

徹底的に洗浄して殺菌までしてから片付ける必要があるの。


だから出来ることなら一回の調合で人数分揃えたほうが圧倒的に効率がいいんだけど。


何故か翔子達はバラバラに来ちゃったのよね。


はふぅ…。


自然とため息が出てしまうわ。


全く同じ作業を何度も繰り返すのって地味に嫌がらせに思えるわ。


まあ、先輩達にそんなつもりはないでしょうけどね。


とりあえず作るべき薬は分かってるから症状は聞くまでもないわ。


見ただけで御堂先輩の状況は理解できるし。


流れ的に答えは出ちゃってるわよね?


だから話も聞かずに調合を開始したのよ。


薬剤を集めて分量を計って器材で混ぜ合わせる。


一言で言ってしまうと単純な作業だけど。


ただただ混ぜればそれでいいっていうものじゃないから、それなりに気を使う作業なのよ。


それでも連続で作成してるから難しいとは思わないわ。


むしろ面倒くさく感じるくらいね。


だから3回目はあっという間に出来上がったのよ。


「出来ました」


完成した薬を御堂先輩に手渡す。


もちろん、お水も一緒よ。


かなり苦いはずの薬だけど。


御堂先輩は文句一つ言わずに、大人しく薬を飲みきってくれたわ。


「少し休めば落ち着くはずです」


「ありがとう」


「いえ、しばらくここで安静にしててください」


「ああ、わかったよ」


「それでは何かあればまた呼んでください」


ベッドで眠りにつく御堂先輩から離れて今度こそ器材を片付ける。


そうして作業台も綺麗に掃除し終えて、

ようやく席につけると思った直後に…4度目の扉が開かれたのよ。


「失礼します」


少し急ぐ雰囲気で医務室に入ってきたのは同じ救急班の一員だったわ。


見覚えがある、というよりは知り合いね。


特別仲がいいっていうほどでもないけど。


仕事上、一緒に行動することが多い男子生徒よ。


まあ、主に試合場で倒れた生徒を搬送するための運搬要員って感じね。


名前は…何だったかしら?


小暮こぐれ君?そんな感じ。


今年入学したばかりの新入生だから今はまだそれほど目立った活躍はないし。


私も名前をうろ覚えだったりするわ。


一応、私と同じ救急班なんだけど。


数日前に配属されたばかりだから、

見習いという名の使いっぱしりで忙しい子なのよ。


今日はどんな仕事をしてるのかしら?


とりあえずは病人じゃないから私が対応する必要はないんだけど。


新人の教育係で私の後輩でもある野坂瑞希のさかみきちゃんが小暮君から話を聞こうとする前に、

何故か彼のほうから私に歩み寄ってきたわ。


「お仕事中にすみません。先輩にお願いがあるんですけど…」


「ん?私?瑞希ちゃんじゃなくて?」


「あ、はい。そうです。理事長の指示で酔い止めの薬を貰いに…」


あ~。


うん。


そういうことね。


言いたいことはよくわかったわ。


でもね?


小暮君が言い切るよりも先に私の忍耐力は限界を突き抜けてしまったのよ。


「だったら、一回で言ってよっ!!もうっ!!!!」


全力で激怒する私を見て小暮君は驚いてた。


まあ、当然よね。


小暮君は今までの状況を知らないわけだし、驚くのは仕方ないと思うわ。


だけど突然、怒り出した私の様子を眺めてた校医の先生は苦笑いを浮かべてる。


もちろんずっと一緒にいた瑞希ちゃんもね。


他にも同僚はいるんだけど、

みんな似たような心境だったと思うわ。


器材の片付けがどれだけ面倒か、みんな知ってるからよ。


だから、かな?


「あの、先輩、今回は私がやりましょうか?ずっと隣で見てましたので、手順はわかりますし」


私に気を使ってくれるみたいで、

瑞希ちゃんが志願してくれたのよ。


「あ~、うん。そうね。瑞希ちゃんも練習したほうがいいでしょうし。お願いするわ」


「はい!任せてください」


…ということで。


4度目の調合は瑞希ちゃんが担当することになったわ。


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