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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
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連勝記録

「皆様お待たせいたしました!!」


ついにこの時が来たわね。


「今大会も見事に優勝したジェノス魔導学園の表彰を行いましょう!!!」


ようやくジェノスの出番が来たのよ。


「11大会連続優勝を成し遂げたことで、ついに歴代最高記録に並んだジェノス魔導学園!!来月の大会も勝ち進めば大会史上初の『年間制覇』が達成されることになります!!!」


そう。


次の大会で未だに誰も成し得なかった年間制覇が実現できるのよ。


その偉業は私でさえ達成できなかったの。


後一歩というところだったのに。


11大会連続優勝の記録は作り出せたのに。


最後の最後で記録を樹立できなかったのよ。


史上最悪の『あの人物』の登場によって、

私の年間制覇の記録はあっさりと断ち切られてしまったわ。


あの日の出来事は今でもはっきりと覚えてる。


天城君に負けた御堂君も同じ心境だったと思うけどね。


私の場合はもっと最悪よ。


最初から最後まで良いように弄ばれただけで、

手も足も出せずに試合場に倒れてしまったからよ。


心が壊れるほどの絶望を味わったあの日の出来事は今でも夢で見るくらい最悪な試合だったわ。


後にも先にも、私が敗北したのはその試合だけなのよ。


『あの魔女』の全てを見透かした笑顔だけは今でもはっきりと覚えてる。


何もかもをあざむき。


何もかもをたばかり。


何もかもをいつわり。


何もかもをうばう。


史上最凶の魔女。


あの女が告げたたった一言の言葉が何よりも悔しかったのを覚えているわ。


『貴女の手には何も残らない。喜びも悲しみも、愛も憎悪も、何一つ、ね。』


あの女が何を思って私に告げたのかは今でも分からない。


だけどあの女に負けたことがきっかけとなって私は年間制覇を諦めてしまったのよ。


次にもう一度戦っても勝てる相手だとは思えなかったの。


どう足掻いても絶対に勝てないと思う存在だったのよ。


その結果として私が学園を卒業してしまったことで、ジェノスの年間制覇は途絶えてしまったわ。


だけどね。


同時にあの女も学園を卒業して姿を消したのよ。


そのせいであの大会以来あの女とは一度も出会うことがなかったんだけど。


今は私が断念した年間制覇を御堂君が実現しようとしてくれているわ。


何も手に入れられないと宣言したあの女の言葉を否定する最大の好機が巡ってきたのよ。


来月の大会さえ乗り切れれば

私が手に入れられなかった年間制覇の称号を御堂君がジェノスにもたらしてくれるの。


その瞬間を思うだけで、

あの女の悔しがる姿が目に浮かびそうな気持ちになれるわね。


「10年前の借りは返すわよ…美咲…。」


呟いた私の声は会場に響き渡る声援によってかき消されてしまう。


おそらく傍に控えている係員でさえ私の言葉は聞き取れなかったでしょうね。


「皆様!多大なる声援と大いなる拍手を持って、彼等の努力を褒めたたえましょう!!!」


大声で叫ぶ係員の声に応じるかのように、

会場全体が震えるほどの大歓声が沸き起こる。


そして同時に沸き起こる拍手の嵐。


まるで空から降り注ぐかのように響く拍手の音を体全体で感じながら。


御堂君の前へと歩み出ることにしたわ。


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