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THE WORLD  作者: SEASONS
4月15日
687/4820

大会順位

《サイド:米倉美由紀》


「それでは!!ただ今より、表彰式を行いたいと思います!!!」


ようやくここまでこれたわね。


突然、御堂君が撤収を始めたせいで一時はどうなることかと思ったけれど。


ひとまず説得が成功したことで無事に表彰式を進められそうな状況にはできたわ。


あとは大会の終了を見届けるのが私の役目になるわね。


まあ、個人的にはこれから戦争が始まるっていう状況で浮かれてる場合じゃないとは思うんだけど。


これも一種の外交政策なのよ。


下手な小細工を考えるよりも、

共和国には戦争を戦い抜けるだけの戦力があるということを一般的に示したほうが士気が上がるの。


それに他国から侵入してくる密偵に対してもちょっとした牽制けんせいにはなると思うわ。


共和国の武力を示すこと。


そのために魔術大会は存在していて、

実力者の栄光を称えるために表彰式が重要視されているの。


それなのに肝心の優勝校が表彰式を辞退するなんて笑い話にもならないわ。


御堂君達がどう思うかに関係なく、

大会は最後までやりきる必要があるのよ。


「それでは!!今大会を制した上位3校に登場してもらいましょう!!」


係員の宣言をきっかけとして一気に盛り上がる会場。


数え切れない程多くの人々の歓声と称賛の声が飛び交っているわね。


この状況こそが、最大の成果よ。


魔術師の力が頼りになるということを多くの国民に知らしめることで、

戦争という絶望的な戦いに一致団結して立ち向かうことができるようになるの。


御堂君達を含めて今この場にいる人達にいきなり戦争が始まるなんて説明をする気はないけれど。


近いうちに全ての情報が公開されることになるわ。


そうなった時に。


一人でも多くの人が前向きな気持ちで戦争と向き合えるように情報を操作するためにも、

『英雄』の存在は必要なのよ。


最後の試合で御堂君が敗北したのは、ちょっとした問題があるけどね。


だけど今まで誰も倒せなかった御堂君を制するほどの人物が

戦場の最前線に向かったという噂が流れれば、

それだけで十分すぎるほど大きな影響を国民に与えることができるはずよ。


魔術師が戦力として重要な価値を持ち。


特筆すべき英雄が戦場の最前線に立つ。


それが国民の希望となって戦争を乗り切る力となるの。


そのためには何としてでも表彰式を無事に終える必要があるわ。


「『ヴァルセム精霊学園』および『グランバニア魔導学園』。そして優勝校である『ジェノス魔導学園』の代表選手は、それぞれ表彰台へとお願いします!!!」


係員の呼び掛けに応じて各学園の生徒が動き出したわね。


『グランバニア魔導学園』から澤木君が、

『ヴァルセム精霊学園』から大塚君が表彰台へと歩み出ているわ。


そして私の側で待機していた御堂君も表彰台に上がってくれる。


優勝は『ジェノス魔導学園』


準優勝は『グランバニア魔導学園』


3位は『ヴァルセム精霊学園』


それが今回の大会の結果よ。


決勝戦とほぼ同時に別の試合場で行われていた3位決定戦は、

ランベリア多国籍学園を下したヴァルセム精霊学園が勝利していたわ。


だから表彰台には呼ばれてないけれど、

4位は『ランベリア多国籍学園』になるのよ。


そして今大会で最も敗北を重ねて最下位になったのは『マールグリナ医術学園』になるわ。


毎回毎回、最下位に名前を記されるマールグリナは常に不名誉な扱いを受けてるけれど。


攻撃魔術の訓練を行う生徒なんてほとんどいないから、

戦闘能力を重視する大会では仕方がない結果でしょうね。


救うことを目的としているマールグリナに戦う力なんて必要ないわ。


学園首位である栗原薫くりはらかおるさんを筆頭に、

魔術医師として人々に救いの手を差し延べることに情熱を注ぎ込む彼女達にとって、

戦いに負けることは当然のことで、誰も傷付けないことこそが最高の選択肢なのよ。


まあ、一応、無傷での制圧を目的とした魔術もあるけれど。


捕獲系の魔術だけで勝ち上がれるほど、この大会は甘くないわ。


努力や戦術しだいでは勝ち点を上げることは出来るかもしれないけれど。


そんなつもりさえも一切ないでしょうね。


戦闘技術の向上に時間を費やすくらいなら、

一つでも多くの医療技術を身につけたいと願うでしょうから、

攻撃力を持たないマールグリナが大会で最下位となるのは当然の結果なのよ。


だから大会の結果を悔やむ生徒なんて、

おそらく一人もいないはずよ。


そしてそれが事実であるかのように

堂々と誇らしげに会場の清掃活動を行うマールグリナの精神に心打たれて、

毎回、大会終了後に協力を申し出る人々が後を絶たないそうよ。


それくらい彼女達の周りには多くの人々が集まっているらしいわ。


…と言っても。


私はそれなりに忙しい立場だから大会終了後の清掃作業なんてはっきりと見たことがないし。


ジェノスに帰らなければいけない御堂君達も手伝いに参加してる暇はないから、

実際にどうなってるかなんて何も知らないでしょうね。


それが良いかどうかは難しいところだけど。


肝心のマールグリナの生徒は特に気にしてないらしいわ。


ある意味、清掃作業も業務の一部って思ってるみたいね。


そんな話を琴平学園長が苦笑気味に話していたことを覚えているわ。


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