第3回戦、第3試合
《サイド:天城総魔》
………。
翔子達が何かもめているようだが、
今は気にしないほうがいいだろうな。
試合内容はともかく、北条が試合に勝ったのは事実だ。
翔子としては納得できないようだが、
北条の勝利に関して不満を感じる必要はない。
どういう方法であろうとも、
目的さえ達成できれば問題ないからな。
手段よりも結果が全てだ。
それが戦いというものだ。
俺はそう思っている。
「それでは第3回戦、第3試合を行います!ジェノス魔導学園から御堂龍馬選手!カリーナ女学園から、矢島奈々香選手!試合場へお願いします!」
係員の呼び出しによって、御堂が試合場へと動き出した。
「僕の対戦相手は矢島さんか」
「龍馬なら楽勝じゃない!頑張って~!!」
応援する翔子に続いて、沙織も龍馬に声をかけている。
「気をつけてね」
「ああ、ありがとう」
御堂は微笑みを返してからそのまま試合場へと上がって行った。
その後ろ姿を心配そうに見つめる沙織だが、
翔子は気楽な笑顔を浮かべている。
そんな二人の表情の違いに気付いた優奈が翔子達に話し掛けていた。
「どうかしたんですか?」
「えっと…。どうって言うほどでもないんだけどね。矢島さんはちょっと変わった人なのよ」
「?」
沙織の説明を聞いて首を傾げる優奈を見たことで、
翔子が説明を引き継いで話を続ける。
「矢島奈々香さんは属性特化なのよ。闇属性の天才って言われてるんだけどね。癖のある…と言うか、何て言うか…。上手く説明しにくいけれど『普通の魔術師』とは全然違うの」
「そうなんですか?」
翔子の説明ではまだ理解が追いつかないようだな。
自分も含めた普通ではない魔術師ばかり見ているせいで、
いまいち違いが分からないのだろう。
試合場に振り返る優奈の視線の先では、
すでに御堂と奈々香の二人が向かい合っている。
「お互いに精一杯頑張ろう」
笑顔を浮かべながら奈々香へと話し掛ける御堂だが、
奈々香に答える気はないようだ。
「………。………。………。」
口を開くことさえせずに、無表情で御堂を眺めている。
会話が成り立たない状況だな。
あまり人のことは言えないが、
試合場は無言の静寂に包まれている。
「まあ…いいか」
御堂は小さくため息を吐いてから
諦めるかのような心境で会話を打ち切っていた。




