ここに残る
《サイド:御堂龍馬》
ふう。
さて、と。
これからどうしたものかな?
深海さんが落ち着くのを待ってから僕達は移動することにしたんだけど。
現状はかんばしくないね。
「…すみませんでした…」
涙を拭いて頭を下げる深海さんの事情が分からないままだからだ。
けれど僕達は無理に追求せずに、
深海さんか…あるいは彼が自分から話してくれるのを待つことにした。
あまり深海さんを困らせるわけにもいかないし、
彼の不信を買うわけにもいかないからね。
「とりあえず移動しましょうか」
提案する沙織の意見に頷く僕と翔子だけど、
真哉は特に何も言わなかった。
今は大人しく僕達の行動を見守っているようだね。
それはそれでいいと思う。
「まだ結構時間があるけど、どこに行く?」
「どこかに喫茶店がなかったかしら?」
問い掛ける翔子に沙織が答えてる。
「ああ、あったかも。確か3階じゃなかったっけ?」
「ええ。せっかくだから、ゆっくり休めるところの方がいいでしょ」
深海さんを休ませたいということだろうね。
さりげなく気を遣う沙織に深海さんが頷いていた。
「私は、どこでも良いです」
「お~け~。それじゃあ、行こっか?」
元気よく歩きだそうとする翔子だけど、
共に移動しようとする僕達を真哉の言葉が遮った。
「悪いが俺はもう少し会場に残る。月に一度しか見れねえ大会だしな。他の学園の試合でも眺めながら、メシの時間を待たせてもらう」
真哉は試合を観戦するためにここに残るつもりのようだ。
だけど、最後の一言に重点を置いていたように感じたのは僕だけじゃないと思うよ。
「夕食は7時だから、遅くならないようにしなさいよ?」
別行動をとろうとする真哉に翔子が声をかけてた。
「んな心配はいらねえっての。俺がメシに遅れるわけねえだろ」
「まあ…それもそうね」
真哉の発言を笑いながら、翔子は会場を離れて行く。
その後を追う沙織と優奈さん。
会場には僕と真哉が残った。
「龍馬は行かないのか?」
「うーん。行っても良いんだけどね。真哉が残るなら僕も見学しようかな?」
「ははっ。好きにすれば良い」
特に気にした様子もないまま、真哉はあてもなく歩きだす。
そんな真哉の後ろ姿を眺めてから、僕も移動することにした。
「僕も行くよ」
彼と別れて翔子達とも別れた僕と真哉は、
しばらく会場内を見学して回ることにしたんだ。




