心の痛み
《サイド:美袋翔子》
(こ、れ…が…っ?)
意識を失う寸前に、
私は少しだけ後悔してしまったわ。
…って、言ってもね。
予想を上回る破壊力に、
とかそういうことじゃないわよ。
それは身体的な苦痛じゃなくて、
その内側の問題だったと思う。
たぶん。
魔力を斬られるという異質な感覚のせいでしょうね。
上手く言葉にできないけれど。
ひどく心が…痛かったの。
辛いとか苦しいとかそういうことじゃなくてね。
ただただ心が痛かったのよ。
そんなの感じられるわけがないのに。
心に痛覚なんてないのに。
それなのに。
心が壊れるような感覚を確かに感じてしまっていたの。
きっとこれが魔剣の力の副作用なんだと思うわ。
でも、ね。
物理的には斬らないって言った総魔の言葉は正しかったみたい。
左腕自体は無事なのよ。
傷一つついていないのは、
ちゃんと見ていたから知ってるわ。
だけど、それだけよ。
あまりにも一瞬の出来事だったから、
それ以上のことを判断する余裕はなかったけどね。
だから魔剣の本当の力を知る事が出来ないまま、
地面に倒れ込んでしまったことだけははっきりと覚えてる。
そしてそれが、この時の私の最後の記憶。
そこで私の意識は途絶えてしまったからよ。




