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THE WORLD(旧版)  作者: SEASONS
4月4日
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謝罪

《サイド:天城総魔》


「…ねえ」


囁くように話しかけてくる翔子の表情にはいつものようなお気楽な雰囲気が消えている。


思い詰めたような表情で見上げる翔子の表情は緊張に満ちているように思えたからだ。


…だから、だろうか。


翔子の瞳を見つめた瞬間に、

翔子の考えに気付いてしまった。


「俺を試すつもりか?」


「ん~。どう、かな?やっぱり、そうなっちゃうのかな?」


返す言葉が見つからないのだろう。


翔子は言葉を選びながら徐々に距離をとっていく。


そして、ゆっくりと頭を下げた。


「一応謝っておくね。ずっと監視してたわけだから…。だから色々と迷惑をかけたかもしれないけど、それでもね、私は結構楽しかったのよ。それは、本当よ」


何かを信じてもらいたいという想いが強く感じられる。


色々と事情があっての行動だったのは間違いないだろう。


それでも翔子なりに思うことがあるようだ。


精一杯の謝罪をしたあとで、

翔子は自らの左手をこちらに向かって差し出してきた。


「一応ね、あなたのルーンを確認すれば私の仕事は終わるの。だからこれでもう私があなたを追い回すことはなくなるわ」


終わりを告げる翔子の表情には、

何故か言葉に言い表せない寂しささえ漂っているように感じられる。


「たぶん、次にあなたの前に現れる時は、お互い敵同士なのかもしれないわ。だから…ね。」


静かに目を閉じて、

一度だけ大きく深呼吸をしている。


「これは私の『謝罪』。それと同時に、あなたの力を見極める『最善の方法』なの」


最善の方法、か。


翔子の言葉の意味は簡単だ。


謝罪の意味もすでに理解出来ている。


「今まで、邪魔ばっかりしてごめんね」


謝り続ける翔子の左手は、

はっきりと見えるほど震えていた。


自分自身で決めたこととはいえ、

それでも怖いと感じてしまうのだろう。


未知の能力に対する恐怖心が翔子の心を蝕んでいるのが分かる。


「ごめん…ね」


隠しきれない恐怖を必死に押さえ込もうとしている翔子だが、

その努力は全く意味をなしていない。


むしろ恐怖心を見せてしまっていることで余計に哀れに思えるほどだ。


そんな翔子の姿を見て俺はどうするべきなのだろうか?


このまま翔子の願いを叶えるべきなのだろうか?


俺にとっての最善は何だ?


どうするべきかを考えてみる。


翔子の願いを聞き入れるのは簡単だ。


翔子は魔剣で左腕を落とせと言っているのだからな。


実行するのは難しくない。


難しくはないのだが。


まだ未完成の力で翔子を斬った場合。


どういう結果が出るのかが俺にも分からない。


翔子の魔力を奪うだけで済むのだろうか?


それともお互いの実力差によって魔力の吸収が失敗に終わるのだろうか?


もしくは…魔力以外の何かまで傷つけて、

翔子を苦しめる結果になってしまうのではないだろうか?


どういう結果が訪れるのかが現時点では何も分からなかった。


「一応言っておくが、一度も実験していない現状では手加減すら出来ない。それでもいいんだな?」


念のために問いかけてみたのだが、

翔子は力強く頷いてみせた。


「ええ、いいわ」


迷いはないらしい。


どういう結果になったとしても全てを受け入れる覚悟を決めているようだ。


だとしたら。


その想いに報いるのがせめてもの礼儀だと思う。


「いいだろう。俺の力を、自らの手で確かめろ」


翔子の想いを受け入れて、

ルーンを発動しようとすると。


「…っ!?」


翔子の左手が、より一層、見ていて哀れなほどに震えだした。


「………。」


固く目を閉じて強く唇を噛み締めている翔子の姿を見ていると、

もはや哀れみしか感じられない。


これでは調査というよりも虐待だ。


翔子の想いを叶えることはできないだろう。


これでは意味がない。


この状況で翔子を斬る事に意味はない。


やるからには翔子の願いを叶えなければ意味がないからな。


そう思うからこそ。


怯え続ける翔子を落ち着かせるために声をかけておくことにした。


「ずっとそうしているつもりか?目を閉じていては判断出来ないだろう?」


「…ぁぅ。そ、そうね…」


こちらの忠告を聞いたことで、

翔子は恐る恐る閉じていた目を開いた。


その瞬間。


翔子は俺の手に在るものに気付いたようだ。


「それが…?」


翔子が何かを言うよりも早く、

魔剣を構えて狙いを定める。


「一つだけ教えておく。この剣は物理的には斬る事も斬らない事も選択出来る。」


「えっ?そ、そうなの?」


「ああ、そしてこの剣が本来斬るべき『モノ』は別にある。それが何かは、すでに分かっているな?」


俺の言葉を聞いたことで、

翔子は予想を確信へと変えたようだった。


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