短剣
「それではこれより第1試合を行います」
試合開始を宣言する審判員が右手を高く掲げてから、勢いよく振り下ろす。
「始めっ!!!」
「…が、頑張りますっ!」
開始直後にルーンを発動させた優奈ちゃんは
身長を大きく上回る弓を構えてピーターに狙いを定めたわ。
たぶん、下手に接近されたら困るからでしょうね。
いつもより慌ててるように見えるわ。
「へえー。お姉ちゃんもルーンが使えるんだ?」
ん?
あれ?
何か変じゃない?
今、確かに言ったわよね?
ピーターは今、『お姉ちゃんも』って言ったはず。
それも悔しそうな表情じゃなくて、笑顔のままで言ったのよ。
だとしたら。
その言葉の意味する答えは一つしかないわよね?
光り輝くピーターの両手。
左右の両方の手に一本ずつルーンが発動したわ。
赤色と青色の二種類のルーンよ。
異なる色の違いが何を意味するのかは分からないけれど、
ピーターは使えるようになっていたようね。
1ヶ月前には使えなかったはずのルーンを使えるようになっていたのよ。
これはまずいかも…?
かなり危険な展開だとは思うわ。
ルーンを構えるピーターの手には二種類の短剣が握り込まれてる。
それは明らかな凶器で、優奈ちゃんにとってもっとも恐れるべき事態よね?
どう考えても防御不可能よね?
ピーターの攻撃は直接的な魔術を吸収出来ない優奈ちゃんに届いてしまうからよ。
吸収出来ない攻撃に対して優奈ちゃんはどうするのかな?
そこが勝負の分かれ目になってしまうでしょうね。




