模倣
《サイド:御堂龍馬》
ふう。
なるほどね。
深海さんの能力。
翔子の能力。
そして彼の能力。
それら全てがようやく理解出来てきたような気がする。
一見、最強に思える深海さんも自分の欠点を知った。
彼の推測が事実なら、
僕も翔子も深海さんに勝つのは容易いだろうね。
だけどもしも深海さんに成長を望む意思があるのなら、
彼女は今よりもさらに強くなれるはずだ。
そして翔子は現状ですでに彼を越える力を持っていることを認めなければいけない。
総合的な能力で言えば彼は間違いなく最強と言えると思う。
だけど、特化した能力。
その一点で見れば深海さんの吸収と同様に、
翔子の攻撃力は彼を上回っているようだ。
吸魔と融合。
その二つにおいて彼が遅れをとっていることは間違いない。
だけどそう考えることで僕は僕自身の能力に危機感を感じてしまう。
「一つ聞きたいんだけど…」
僕の発言に、全員の視線が集中した。
「僕の特性である支配と暴力。それすらも、きみは使えるのかい?」
「…かもしれないな」
問い掛ける僕に、彼は迷うことなく頷いてみせた。
「支配に関して俺はまだ正確な情報を持っていない。以前の試合において俺達の能力はどちらも正常に機能しなかったからな。解析できていないというのが現状だ。そして暴力に関しても未確認だ。だから実際にできるかどうかという証明はできないが、それでも断言は出来る。御堂に限らず、北条の速度特化による突破能力や沙織の全属性等。あらゆる特性の模倣が俺には可能のはずだ」
『模倣』と彼は言った。
そのものではなくて、それに近しい力。
そういう意味だ。
能力そのものを扱えるのではなくて、
魔術で擬似的に再現できるという意味だろうね。
だけどそれでも危機感を感じずにはいられない。
彼はあらゆる能力を魔術という形で駆使出来るからだ。
その事実が僕の心を圧迫している。
どれだけ強くなってもどれほどの力を手に入れても、
彼は全ての力を『模倣』することが出来るからだ。
例えそれが能力的に若干劣るものであったとしても、
驚異であることに変わりはない。
だから彼の実力は底が見えない。
僕はそう思い、手が汗ばむ感覚を感じてしまった。




