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THE WORLD  作者: SEASONS
4月12日
507/4820

放送を聞いた時点で

《サイド:美袋翔子》


さて、と。


これからどうするかなんだけど。


理事長室を出てからすぐに、真哉が龍馬に話しかけていたわ。


「なあ、龍馬。ちょっと頼みがあるんだが、今日時間取れないか?」


「ん?どうしたんだい?」


「まあ、ちょっと、な」


理由を言わない真哉を見つめる龍馬は、

少し考え込んでどうするかを悩んでいるように見えるわね。


もしかして何か予定でもあるのかな?


「今日はまだ特風会に行っていないから仕事があるかも…」


仕事を心配する龍馬だけど、

沙織が気をきかせて話しかけていたわ。


「それなら私が見ておくわ。せっかくだから北条君に付き合ってあげたら?」


「…いいのかい?」


「ええ」


「だったら、お願いしようかな」


沙織の提案を受け入れた龍馬は、真哉に付き合うことを決めたようね。


「分かった。手伝うよ」


「よし!なら早速で悪いがついて来てくれ!」


真哉の先導で龍馬があとを追って歩きだす。


「それじゃあ、みんな。また今度」


挨拶をしてから離れていく龍馬だけど。


総魔と擦れ違う瞬間に話しかけていたわね。


「本当のことを言うと、きみの検証に参加したかったんだけどね。」


「いずれ機会があるだろう」


「…だと良いんだけどね。」


心残りがあるみたいね。


それでも龍馬は真哉と二人でどこかへ歩いて行ったわ。


だけど…。


実験、ね~。


総魔に振り向いて確認してみる。


「で?実験はまだ終わらないの?」


「ああ。まだ今日一日はかかるだろうな」


ふ~ん。


「そうなんだ?」


…ということは。


当然今日一日は総魔に会えない可能性が高いっていうことよね?


研究所に行けば会えるんだけど。


邪魔になるのは目に見えてるから行かないわ。


「今からすぐに行くの?」


「いや、せっかく研究所を出てきたんだ。朝食を済ませてから研究所に戻っても遅くはないはずだ」


えっ!?


今から、朝食を、食べに、行くの?


そうならそうと言ってくれたら、食べてこなかったのに~!


うぁぁぁ…。


もう食べちゃった…。


だけど。


優奈ちゃん達はまだ食べてなかったようね。


「今から食堂に行くんですか?」


「ああ」


「それじゃあ、私達と一緒ですね」


当然だけど、優奈ちゃんがまだということは

悠理ちゃんもご飯を食べていないということになるわ。


「一緒に行っても良いですか?」


「ああ、構わない」


尋ねる優奈ちゃんに頷いてから、

総魔は食堂に向かって歩きだしちゃう。


…で。


優奈ちゃんと悠理ちゃんは手を繋いで総魔の後を追っていっちゃうのよ。


うぬぬぬ…っ。


あとに残された私と沙織は立ち止まったままよ。


個人的には総魔について行きたい気持ちが山々なんだけど。


さっき食べたばかりでお腹が一杯なのよね。


うぅぅぅぅ…。


何で…


何で…っ!


何で食べちゃったの、私っ!?


放送を聞いた時点で諦めていればっ!!


総魔と一緒にご飯を食べれたのに~!!!


さすがに食べもしないのに食堂に行くなんていくら何でも不自然過ぎるわよね?


うぁぁぁ……っ!


頭を抱えそうになっちゃう。


でも、でも、まだ、もしかしたら?


心の中で葛藤を抱えながらも沙織に振り返ってみる。


そして最後の希望を尋ねてみる。


「もしかして、沙織もまだ?」


「いいえ。私はもう行ってきたわよ」


はう…。


やっぱりそうよね。


沙織は私よりも早起きだもんね。


沙織が行かないとなれば、尚更、総魔のあとを追いにくくなっちゃったわ。


はぁぁぁ…。


深々とため息を吐いちゃうけど。


そんな私を見て、何故か沙織は楽しそうに微笑んでた。


「どうかしたの?」


「ううん。何でもないわ」


何でもないと答えながらも笑みを絶やさない沙織の態度が気になるわね。


う~ん。


何だろ?


この見透かされているような感覚は…。


もしかして総魔を好きなことがバレバレなのかな?


うぅ…。


だとすれば恥ずかしすぎる。


密かに冷や汗を流したりしちゃうけれど。


事実を沙織に確認する勇気なんて私にはなかったわ。


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