呼び出し
《サイド:深海優奈》
あぅぅ~。
突然、呼び出しを受けてしまいました。
ですが、その理由というか、説明がありませんでした。
どうして呼び出されたのかが分からないんです。
もしかして何か怒られるようなことでもしたのでしょうか?
授業に出ていないとか…。
図書室に長時間居過ぎとか…。
寮に二人で一緒にいることとか…。
そういうことが問題になっているのでしょうか?
あるいは実力と成績がともなっていないことで、
何らかの処分があるのでしょうか?
理由がわからないことで不安になってしまいます。
子供の頃からそうだったのですが。
特殊な能力によって色々と問題が起きてしまうことは今までにも何度もありました。
その度に呼び出しを受けて冷たい目で見られたことがありますので、
呼び出しに関して良い思い出がありません。
なので、どうしても不安になってしまうんです。
突然の放送での呼び出し。
身に覚えがないというか、ありすぎると言うか…。
悠理ちゃんと二人で食堂に向かっている途中での呼び出しだったので、
悠理ちゃんの手を掴んだまま放せないでいました。
「ゆ、悠理ちゃん…。私、何かしたのかな?」
色々と不安になってしまいますが、
そんな私を見て、悠理ちゃんは苦笑していました。
「そんなに怖がらなくても良いんじゃない?呼ばれたのが優奈一人だけならともかく。先輩達もみんな呼ばれてるわけだし。多分、今度の大会の話とかじゃないの?」
あぁ~。
なるほど。
そうかもしれませんね。
ついつい悪い方向に考えてしまうのですが、
考えてみれば確かにそうかもしれません。
総魔さんや翔子先輩達も呼び出されているわけですので、
私だけが問題を起こしたということではない気がします。
たぶん…ないはずです。
なので。
悠理ちゃんの言うように、
大会のお話以外に考えられないと思います。
「行かなきゃダメだよね?」
悠理ちゃんを見つめてみると。
「いいよ。待ってるから」
悠理ちゃんは笑顔を浮かべたまま頷いてから、待ってると言ってくれました。
ですが…。
だからと言って不安がなくなるわけではありません。
詳細はともかくとして、
一人で行くのは心細いんです。
「一緒に…は、無理かな?」
そもそも理事長室がどこにあるのかも知らないんです。
「どうかな~?行くだけなら行ってみてもいいけど。一応、私は部外者だから追い出されるんじゃないかな?」
部外者と言いながらも、
悠理ちゃんは私と手を繋いだまま歩いてくれました。
「とりあえず行こ!あとのことは…まあ、あとで考えれば良いし」
「うん」
嫌がらずに微笑んでくれる悠理ちゃんは、
やっぱりとても優しい人だと思います。




