思い返してみると
《サイド:美袋翔子》
ん~。
もうすぐ夜だけど。
町はまだまだ賑やかね。
周囲を見渡してみれば、
夕食の準備に取り掛かる主婦や遊び疲れて家路につく子供達の姿が見えるし。
これから本格的に仕事が始まる飲食店なんかは、
とっても良い匂いを漂わせていたりするわ。
その匂いに誘われてお店に入っていく人達も結構いるみたい。
ひと仕事終えた人達の一日の終わりって感じよね。
この光景って結構好きだったりするわ。
子供の頃は夕方って何となく寂しく感じていたんだけど。
成長するにしたがって、
自由な時間が近づいてきてるって思うようになってきたからよ。
だからと言って夜遊びをするほどのお金はないし、
親に迷惑をかけるようなことをしたいとは思わないけどね。
せいぜい沙織の家に行って成美ちゃんと遊ぶくらい?
それくらいなら、問題ないわよね?
あとはまあ、
沙織の家に続く歩き慣れた道をたわいもない話をしながら歩く道中とかかな。
沙織と二人きりのこの時間は、
私にとって安らぎの一時でもあるのよ。
「さすがに今日は疲れたわね~」
呟きながら今日一日の出来事を振り返ってみる。
朝から真哉と試合をしたでしょ?
お昼前には沙織とも試合をしたでしょ?
昼食はだらだらと満喫してたけど。
そのあとは図書室で勉強会なのよね~。
う~ん。
思い返してみると、後半はだらけていただけのような気がするかな?
ううん。
そんなはずはないわ。
ちゃんと優奈ちゃんと悠理ちゃんも面倒を見てたわけだし。
たぶん、それは、きっと、気のせいよ。
私はだらけてないわ。
ちゃんと努力してたはず。
そんなふうに無理やり思い込むことにしてから、
改めて沙織に話しかけてみることにしたわ。




