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THE WORLD  作者: SEASONS
エピローグ
4816/4820

入学式

《サイド:常磐成美》

時が過ぎて新たな年度を迎えた4月1日。



午前8時から開催される入学式の会場に制服姿で訪れました。



…はぅぅ~。



「緊張するよぅ。」



この日が来るのをずっと待ち望んでいたのですが、

それでも今日という日の訪れには必要以上に緊張を感じてしまいます。



…だからでしょうか?



「ったく、ホントに成美はダメっ子ね~。」



私と同じ制服姿の霧華ちゃんが話しかけてくれたんです。



「激しく不満はあるけれど。一応、『書類上』では成美が私の保護者っていうことになってるんだから、しっかりしなさいよねっ!」



…う、うん。



「頑張るよ…。」



書類上の保護者。


その意味はちゃんと理解しています。



「…えっとね。霧華ちゃんは私が守ってあげるからねっ。」


「………。」



ちゃんと頑張ろうと思って宣言してみたのですが、

霧華ちゃんは深々とため息を吐いていました。



「全く期待できないわね…。」



…あう~。



「ったく…。年齢制限なんてなければ、どう考えても私が成美の保護者なのに…っ!」



…うぅ~。



何を言われても反論できません。



精神的にも実力的にも。


どちらかと言えば霧華ちゃんのほうが保護者としてふさわしいのは分かっているからです。



ただ、まだ11歳になったばかりの霧華ちゃんでは学園の入学条件を満たせていないので、

本来ならあと2年くらい待ってからでないと年齢制限のせいで入学できないはずでした。



…ですが。



私がどうしても霧華ちゃんと一緒に入学したいとお願いしたことで、

現在の学園長である磯部隆志いそべたかしさんに米倉さんが口添えしてくれたんです。


そのおかげで『条件付き』で霧華ちゃんの入学が認めてもらえました。



「成美が私の保護者になることが入学の条件なんて…今でも激しく納得できないわ。」



…だよね。



例えそれが書類上の扱いであっても、

霧華ちゃんが私の保護者だと思うので立場が反対です。



「ったく…。こっちは年下って言うだけでこの扱いなのに、成美は年上って言うだけで保護者なんて…。この世界の常識を疑いたくなるわ。」



…そ、そこまで言わなくても。



もう少し私のことを認めてほしいと思うのですが、

まだまだ霧華ちゃんには頭が上がりません。


この一年の生活のおかげで私もそれなりにまともな知識を身に付けたつもりなのですが、

それでも根本的に常識が足りない私の保護を霧華ちゃんはずっと続けてくれていたからです。



だからこそ霧華ちゃんと一緒に入学しようと考えたのですが。


入学資格として13歳以上という年齢制限を満たせないという理由があるせいで、

霧華ちゃんは『保護者と同伴』という条件付きで私と一緒に生活することを義務付けられてしまったんです。



「結局、学園の寮まで二人で一緒なんて…。一体どれだけ面倒見させれば気が済むのよ?」



…はぅぅぅ~。



口では面倒くさそうに拒絶の意思を示す霧華ちゃんだけど。



「私は霧華ちゃんが一緒にいてくれて嬉しいよ~♪」



私としてはこんなに嬉しいことはありません。



「ずっとずっと一緒だよねっ♪」



朝から夜までずっと一緒にいられるんです。


そう思うだけで嬉しくて仕方がないのですが。



「はぁ…。ったく、しょうがないわね~」



霧華ちゃんはしぶしぶといった雰囲気で現状を受け入れていました。



「まあ、今さら文句を言ってもどうにもならないし、特別に私が成美の面倒を見てあげるわよ。」



…うん♪



本当は嫌だという感じで遠回しに宣言する霧華ちゃんだけど、

どう見ても照れ臭そうな表情にしか見えません。



「言っとくけど、仕方がないから、だからね!」


「うんっ!分かってるよ♪よろしくねっ。」



言葉を区切って全力で拒絶の意思を示す霧華ちゃんだけど。


気にせずに全力で霧華ちゃんの協力をお願いすることにしました。



「一緒に頑張ろうねっ♪」


「………。」



今日もまた照れてしまった霧華ちゃんは、

顔を真っ赤にしながらそっぽを向いてしまいました。



「…ったく~。」



これ以上何を言っても無駄だと考えたのかな?


不満を口に出すのを諦めた様子です。



「もうどうでもいいわ。とりあえず、ちゃっちゃと卒業を目指すわよ!」



入学式の最中なのにもう卒業を宣言しています。



「そんなにのんびりしてられるほど暇じゃないんだから。ささっと学園1位を目指すわよ!」



…う~ん。


…出来るのかな~?



私は全く自信がないんですけど。


入学試験で首席を獲得した霧華ちゃんは去年の天城総魔さんと同じように学園の頂点を目指して短期突破を狙うつもりのようです。



「成績も実力も私が上なんだから、成美もちゃんとついてきなさいよ。」



…う、うん。



入学試験で私は2位でした。


魔術の種類は私のほうが沢山使えるのですが、

それでも霧華ちゃんには勝てなかったそうです。



…どういう基準なのかな~?



お姉ちゃんと翔子お姉ちゃんの魔術が使える私よりも成績が上の霧華ちゃんの実力というのが私にも良く分かりません。



…数の問題じゃないのかな~?



よくよく考えてみれば去年の首位だった天城総魔さんも魔術の種類は少なかったそうです。



多分、今の霧華ちゃんよりも少なかったのではないでしょうか?



それでも首位になれたというのは単純な魔術の数ではない何らかの採点基準があるのかもしれませんね。



…だからこそもっともっと頑張らないとっ。



霧華ちゃんに置いて行かれないように努力したいと思います。



「私も頑張るよ~♪」



お姉ちゃん達に笑われないように頑張ります。


そしてお姉ちゃん達から誉めてもらえるように。



「頑張るからねっ♪」



しっかりと宣言しました。



生存者(74)《矢野霧華やのきりか



成美と共に入学した後に、

和泉由香里から特風へ参加するように誘われる。


その後1年間は学園にとどまるものの。


学園を卒業する成美と共に学園から離れて再び花屋の仕事へと戻ることに。


そうして数年の時を経て、

ジェノスの知事として末永く町に君臨する。




生存者(75)《常磐健介ときわけんすけ



成美が学園を入学してからも。


そして成美が学園を卒業した後も。


ジェノスにとどまってケーキ店を営み続けた。




生存者(76)《常磐千津枝ときわちづえ



成美が学園に入学した後もジェノスにとどまり続ける。


一度だけ成美と龍馬の結婚式に参列するためにレーヴァを訪れるのだが。


成美の誘いに乗りきれずに、

沙織の思い出を捨てないためにジェノスの家に夫婦で残ることにした。




生存者(77)《高野たかのみなみ》



常磐夫妻のお店で長く下積みを積んでいたのだが、

成美がレーヴァに移住する際に独立の話を持ちかけられて成美と共にレーヴァへ移住する。


その後。


パフェのアンジェと並ぶ共和国屈指の名店として常磐ケーキ店の名を大陸中に広める実績を打ち出す。




生存者(78)《美袋恵美みなぎえみ



成美の入学と卒業を密かに見届けて、

成美の結婚式まで見届けた後に夫と二人きりでジェノスで静かな日々を過ごす。


翔子の思い出をずっと残し続けながら…


穏やかな日々を過ごした。




生存者(79)《深海大智ふかみだいち



成美がジェノスを離れてからも花屋の仕事を続ける。


いつの日にか優奈が帰ってくると信じ続けながら、

毎朝カトレアの花を店先に並べている。




生存者(80)《深海希美ふかみのぞみ



成美の結婚式を祝福した後もジェノスの町にとどまり続ける。


愛する夫と共に娘の帰りを待ちながら、

いつか孫を抱ける日が来ることをずっとずっと願い続けた。




生存者(81)《華村咲枝はなむらさきえ



成美が学園に入学したその日に、

亡き武藤慎吾と同様に学園に入学することになったひまわり園の少年の入学を見守っていた。


その後も戦争によって両親を失った子供達を積極的に保護して回りながら、

限られた資金で懸命に施設を守り続けていく。




生存者(82)《常磐成美ときわなるみ



学園に入学したその日に霧華と共に特風に参加する。


その後1年間にわたり必死に勉強を進めながら、

宮野あずさを撃破するほどの活躍を魔術大会で見せた。


そして念願の卒業を果たした後に、

龍馬のもとを訪れて結婚という幸せを手に入れる。




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