魔女に対する抑止力
《サイド:大塚義明》
9月某日。
夏が過ぎてゆっくりと秋が訪れようとしている頃に。
俺達はレーヴァの宮廷の最上階に位置する円卓の間に訪れることにした。
「久しぶりだな、御堂。」
「ああ、久しぶりだね大塚くん。こうして話をするのは2か月ぶりくらいかな?」
立花光輝や近藤誠治らと共に執務を行っている御堂に会いに来たことで、
御堂は笑顔で出迎えてくれたんだ。
「色々と報告は聞いてるよ。ミッドガルム領の各地で共和国の平定に協力してくれていたらしいね。」
「ああ、成瀬や敦子は各地の情報に詳しいからな。」
密偵として活動していた頃の情報を駆使してくれた仲間達と共に各町の平定に動いていたのだが、
共和国軍や立花光輝の協力もあって旧ミッドガルムの完全制圧はようやく終わりを迎えることができた。
「ひとまず完全平定が終わったからな。最後に挨拶をしておこうと思って来たんだ。」
「やっぱり、きみ達も行くのかい?」
…ああ、そのつもりだ。
「本当ならもっと早く向かいたかったのだが、多くの戦力が各地に流れている状況で俺達まで抜けてしまっては御堂も大変だろうと思ってな。出来る限りの協力をさせてもらっていたが、今となってはもう俺達がここにとどまる理由もないだろう。」
「そうは思わないけど…。」
…いや。
「御堂には申し訳ないが、俺達も大陸中部の戦いに参戦させてもらう。」
「きみ達も総魔を追うのかい?」
「いや、俺達の目的は別にある…と言っても、個人的な理由だがな。」
「冬月さん達だね。」
「ああ、魔女を野放しにしておくわけにはいかないからな。」
俺達にどこまでできるかは分からないが、
何もしなければ真奈美がうるさいという理由もあった。
「魔女に対する抑止力として冬月彩花を追いかけるつもりでいる。」
「そうか…。きみ達までいなくなると寂しくなるけど仕方がないね。」
「色々と戦力が抜けて大変だろうが何とか頑張ってくれ。」
「うん。僕なら大丈夫だよ。とても心強い人達がいるからね。」
…ああ、そうだな。
立花光輝や近藤誠治だけではなく、
米倉宗一郎や琴平重郎などの多くの有力者が御堂への協力を約束してくれているからな。
俺達が共和国を離れたとしても何とかなるはずだ。
「まあ、いざとなればジェノスにいる敦也や北条雪さんも手伝ってくれるだろうし、もしも共和国に何かあっても僕達で守り抜いて見せるよ。」
「ああ、任せる。特にカリーナに残った宮野あずさの保護は頼みたい。」
「そうだね。彼女はきみ達にとっても冬月さんにとっても重要な人だからね。僕にできる範囲内で色々と手配をしておくよ。」
「すまないな。」
「いや、きみ達には沢山お世話になったからね。この程度のことでよければ喜んで手を貸すよ。」
共和国の安定に尽力を尽くしたからだけではないだろうが、
宮野あずさの保護くらいはしっかりやると約束してくれた。
「きみ達の憂いは僕が何とかするよ。だから何も心配せずに安心して旅立ってくれればいい。」
この国を治める者の務めとして、
御堂は俺達の旅立ちを見送ってくれている。
「自分達が満足できるように頑張るんだ。」
「ああ、もちろんそのつもりだ。」
行くと決めた以上は半端な結果は求めない。
「大陸中部も平定して見せる。それが俺達の求める結果だ。」
少しでも共和国の驚異を消し去って、
少しでも共和国の安定を守り抜く。
そのために。
「行ってくる。」
「ああ、さよなら、大塚君。また会える日を楽しみにしているよ。」
…ああ、そうだな。
「いずれそういう日がくるだろう。」
いつかまた再会できると信じながら円卓の間を後にして、
3人の仲間達と共にレーヴァから旅立つことにした。
生存者(49)《大塚義昭》
龍馬との話し合いの後に大陸中部へと渡る。
その後。
冬月彩花の捜索を続けながら慶太達とも接触を繰り返し、
やがておとずれる最終決戦に参加することになる。
生存者(50)《八木真奈美》
義昭を強引に連れ回しながら彩花への復讐を目指す。
その過程で何度も彩花と遭遇するのだが、
全く歯が立たずに何度も敗北を繰り返してしまう。
生存者(51)《成瀬智久》
大陸中部への旅立ちの前に敦子に告白するものの、
すぐには返事をもらえずに苦悩の日々を送ることに。
その後も義昭の良き理解者として共に行動するものの、
真奈美や敦子の暴走に振り回されて地味に苦労を積み重ねてしまう。
生存者(52)《金田敦子》
成瀬の告白を保留にしつつ、
真奈美と共に自由気ままに過ごしていく。
いつか戦いが終わったら成瀬を受け入れようと考えながらも、
終わりの見えない戦いにひたすら身を投じていく。




