故郷を取り戻す
《サイド:フェイ・ウォルカ》
7月上旬。
戦争が終わってからすでに2ヶ月が過ぎた。
澤木京一が王位についてからみても一月以上が経過した頃。
イーファ西部の港から船に乗り、
西の大陸へと海を渡った俺達は大陸の最南端に位置するかつての故郷テネス国へと帰国した。
…この国は変わらないな。
幼かった頃の記憶と比べても、この国は何も変わっていない。
少なくとも魔術師狩りという脅威は今もなお存在していて、
今この瞬間においてもどこかの地域で多くの仲間達が殺されているのは間違いないはずだ。
…シェリルから聞いた話が事実であれば。
この国を含む周辺各国が勢力を肥大化させた共和国に対抗するために急速に軍事力を拡大させているはずであり、
共和国に対する見せしめとして以前よりも魔術師狩りが本格化しているはずだった。
「まずは同胞の情報を集めながら、この国のどこかにある魔術師ギルドと接触するべきだろうな。」
たった一人の力では世界を変えることはできない。
それはもう十分過ぎるほど理解している。
だからこそ一人でも多くの仲間を集めて、
この国の体制を変えるつもりでいた。
…俺一人でこの国を変えられるとは思わない。
だから信頼できる仲間達と共に戦うつもりでいる。
「マリア、ピーター。俺達で故郷を取り戻すぞ。」
共和国から共に旅立ったたった二人の仲間。
マリア・パラスとピーター・フロンドと共に新たな戦場へとたどり着いた俺は、
失った故郷を取り戻すためにテネス国そのものに戦いを挑もうとしていた。
「かつて天城総魔がアストリア王国に戦いを挑んだように、俺達も俺達の手で過去の悲しみを払拭する。」
過去と向き合って失った故郷を取り戻す。
そのために戦に挑む俺に、
マリアは自らの運命を託してくれたんだ。
「大丈夫。これから先の戦いに何があるとしても、必ず私達がフェイを守るわ。だから、フェイは自分の信じた道を進んで。」
「ああ、ありがとう、マリア。」
最愛の恋人であるマリアの協力を得て。
「大丈夫!フェイお兄ちゃんには僕達がついてるんだから、だから絶対上手くいくよっ!」
「ああ、そうだな。」
共に行動するピーターの協力も得て。
改めて思うことは一つ。
「変えられない世界は存在しない。たった一人では何もできないが、仲間がいれば必ずできる。」
今はたった二人の仲間だが。
この国にも多くの仲間がいるはずで、
魔術師に協力してくれる者達も必ずどこかにいるはずだ。
…陰陽師や軍隊の中にも魔術師の存在を認めてくれる者達はいるはずだからな。
アルバニア王国がそうだったように。
セルビナ王国がそうだったように。
この国にも分かり合える者達がいるはずだと信じている。
「ここからが俺達の戦いだ。そしてこの戦いを乗りきって、俺達は俺達の故郷を取り戻す!そのために出来る最善を尽くそう。」
共和国とアルバニア王国。
そしてシルファス連邦国の3か国を渡り歩いてから各国の現状を見定めたのちにイーファの港から海を渡ってかつての故郷に帰還した俺達の目的は故郷の奪取であり、
もう二度と悲しみを繰り返させないための革命でもあった。
「おそらくはこの国にも竜の牙と同様の革命軍がいるはずだ。魔術師ギルドの捜索と平行して革命軍の情報も集めるぞ。」
常に拠点を変えて魔術師狩りを回避している魔術師ギルドの捜索と、
この国のどこかに身を潜めている革命軍を探しだして味方に引き込むためにたどり着いたばかりの港から動き出す。
「一人でも多くの仲間を集めて魔術師狩りの強行を阻止するぞ!」
共和国を守り。
まだ見ぬ仲間達を守るために。
「行くぞっ!!」
マリアとピーターと共に、
新たな戦いへと身を投じることにした。
生存者(44)《フェイ・ウォルカ》
テネス国に潜入した後に各地で少しずつ仲間を集めながら勢力を拡大して、
ギルドと革命軍を味方に引き込みテネス国と正面から対立する。
その戦場での戦いぶりから『戦神』として多くの者達に恐れられる。
生存者(45) 《マリア・パラス》
フェイの戦いが激化していく最中で常にフェイに寄り添い命を懸けてフェイを守り抜く。
その愛を多くの者達が称賛し、
いつしか『聖母』と呼ばれるようになる。
生存者(46)《ピーター・フロンド》
テネスでの戦いにある程度の安定が訪れた頃に、
フェイのもとを離れて単独で故郷ラグラ王国へと向かう。
その後も新たな仲間達との出会いと別れを繰り返し。
カーター・ベルナンドの故郷へたどり着いてからは、
その町を拠点として新たな戦いへと挑むようになる。




