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THE WORLD  作者: SEASONS
エピローグ
4793/4820

卒業式

《サイド:御堂龍馬》

総魔と深海さんの二人が誰にも見送られることなくジェノスを旅立った頃。



学園の一角にある催事場では僕達の卒業式が行われようとしていた。



「…御堂龍馬、長野敦也、森下千夏、鈴置美春。以上4名の卒業を認め、これより祝福の儀として勲章の授与を執り行う。」



壇上に立って進行を務める近藤学園長の宣言によって、

生徒指導部の主任である磯部いそべ先生が僕達の前まで歩みを進めてくる。



「卒業おめでとう。」



祝いの言葉を告げながら歩み寄ってきた磯部先生は、

部下に運ばせている装飾台からジェノス魔導学園の紋章が刻印されている勲章を一つ取り出して、

僕の制服の胸元に取り付けてくれた。



…これが、卒業の証なのか。



ずっと求めていながらも、

魔術大会で年間制覇を達成するためにあえて手に入れようとしなかった物。


それが今は僕の手に届くところにあるんだ。



「うむ。良く似合っているな。」


「あ、ありがとうございます。」



あまり褒められると、

ちょっぴり照れくさいんだけどね。


それでもこうして無事に卒業の証を手に入れられたことで周囲にいる米倉さんや教師達、それに数多くの生徒が盛大な拍手を送ってくれていた。



「ありがとうございます。」


「うむ。きみには長年世話になってきたが、こうして卒業の授与を行えることを嬉しく思う。ありがとう、そして、おめでとう。」



…い、いえ。



改めてみんなにもお礼を言ってみると、

目の前にいる磯部先生が代表して僕の卒業を祝福してくれたんだ。



「今日この瞬間にたどり着けたのは今まで僕を指導してくださった先生方や米倉さん達のおかげです。このご恩は決して忘れません。」


「ははははっ、ありがとう。きみのその言葉はこの学園にいる全ての教師達にとって最大限の励みになるだろう。」


「そ、それは言い過ぎじゃないですか?」


「いやいや、そんなことはない。きっと多くの者達が同じように考えているはずだ。」



…そうだろうか?



僕にはそれほどの影響力なんてないと思うんだけど。


あまり否定しすぎるのも失礼な気がするからそれ以上は何も言えなかった。



「正直に言えば今日できみが学園を去ってしまうのは非常に惜しいと思うのだが…。無理に引き留めるのも野暮というものだからな。これから新たな人生に向かうきみを全力で応援させてもらおうと思っている。」


「は、はい。ありがとうございます。」


「ははははっ!御堂龍馬君、卒業おめでとう。」



喜びや感謝の想いを込めて卒業を祝ってくれた磯部先生は、

最後に僕と固い握手を交わしてから次の人物の前へと歩みを進めていった。



「…さて、長野敦也君。きみとも長い付き合いだったが、こうして無事に卒業も見送れることを嬉しく思っている。」


「ははっ。まあ、色々な意味で一番関わりを持っていたのは俺だったかもな。」



…かもしれないね。



「そうだな。きみが特風に所属していたからとも言えるが、その中でも特にきみは雑務が多かったからな。必然的に生徒指導部と関わることが多かったのだが、そのきみがいなくなるかと思うと御堂君以上に寂しく感じてしまうのが本音になる。」


「…その辺りに関しては色々と不満というか、言いたいことはあるんだけどな。」


「ははははっ!まあ、きみにとってはそうかもしれないな。本来なら諜報班の責任者は美袋翔子さんだったからな。彼女が普通に職務を全うしていれば副責任者のきみが苦労することはなかっただろう。」


「ホントに、面倒なことばっかり俺に回ってきていい迷惑だった。」


「それでも、楽しかったのだろう?」


「…ああ、まあ、な。」



…ははっ。



淳弥らしいね。



僕から見てもすごく苦労していたように思えたんだけど。


淳弥としてはそれなりに楽しんでいたようだった。



…それなら良かったよ。



「惜しい人物を亡くしたが、きみの卒業を見送れるだけでもまだ良かったと思うしかない。」



…ええ、そうですね。



本当なら沙織や真哉や翔子とも卒業したかったけれど。


その願いは叶わないんだ。


だけどその代わりに淳弥達と卒業できるのは僕にとっても喜ばしい出来事だった。



「出来ることならば特風の生徒には全員卒業してほしかったのだが、これも運命だ。せめてきみ達の卒業だけでも笑顔で見送らせてもらおうと思う。」



寂しさや悲しみはあるとしても、

今は僕達の卒業を笑顔で見送ってくれているんだ。


その想いを言葉にした磯部先生は、

僕の時と同様に敦也の制服にもジェノス魔導学園の紋章が描かれた勲章を取り付けた。



「卒業おめでとう。きみの未来にも輝かしい日々があることを願っている。」


「…だったらいいな。」



磯部先生は淳弥を応援していたけれど。


当の本人は曖昧な笑みを浮かべてた。



…うーん。



こういう言い方は失礼だろうけど。


淳弥の幸せな日常というものが僕には想像できなかった。



…きっと淳弥自身も難しいと思っているんじゃないかな?



だからこそ誰よりも幸せな日々を渇望する敦也は、

苦笑いを浮かべながら磯部先生と握手を交わしていたんだ。



「とりあえず、世話になったな。」


「ああ、お互いにな。」



しっかりとお互いの手を握りあって別れの挨拶をすませてから二人は静かに離れていく。



「それじゃあな。」


「ああ、きみに幸あれ。」



最後に祝福の言葉を残した磯部先生は、

次の卒業生である森下さんとも向き合おうとしていた。



「卒業おめでとう。きみとはあまり関わりがないが、この学園の教師としてきみの卒業も祝福させてもらおう。」


「はいっ!ありがとうございます!!」



自分の順番が回ってきたことで、

森下さんはすごく幸せそうな微笑みを浮かべている。



「やれば出きるって感じですよね~!」



…はははっ。


…そうかもしれないね。



明るく元気一杯にはしゃぐ笑顔はどこまでも無邪気で、

見ている周りが微笑ましく思えるほど幸せに満ち溢れているんだ。


学園での成績や卒業試験での結果はそれほど特筆できるような内容ではないとしても、

ちゃんと自分の実力で勝ち取った卒業の二文字を誇らしく思っている気持ちが伝わってくる。



「ちゃんと頑張りました~!」



最大限の喜びを表現して素直に卒業を喜ぶ。


そんな元気一杯の笑顔を見つめていた磯部先生は、

再び勲章を手にとってから森下さんの胸元にも取り付けていた。



「これで今日からきみは誰もが認めるジェノス魔導学園の卒業生だ。これまでの努力を無駄にしないよう、これからも頑張ってほしい。」


「はい!!そのつもりですっ!」



…ははっ。


…良い笑顔だね。



鈴置さんを支えるという最大の目標を持っているからかな?



「これで私も卒業っ!!」



手に入れた勲章に視線を向けた森下さんは、

今までで一番と思えるほど元気一杯の笑顔を見せてから全力で頭を下げていた。



「ありがとうございますっ!!」



磯部先生に感謝して。


近藤学園長にも感謝して。


周囲の人々にも笑顔を振り撒いたあとで。



「卒業ばんざいっ!!」



全力で喜びを表現していたんだ。



「ははははっ!」


「ふふっ。」



全力で喜ぶ森下さんを見て笑いだす先生達。



そんな二人の笑い声につられるかのように。



…ははははっ!



僕も笑いだしてしまっていた。



「卒業おめでと~!!」


「森下さん、おめでと~!」



すでに戦闘不能から目覚めて様子を見ていた芹澤さんや和泉さん達も大きな声で祝福の言葉を贈ったあとで。



「千夏ちゃん、おめでと~!!」


「森下さん、おめでとう!」



周囲に集まっている生徒達の中から救急班として共に活動していた森下さんの知り合いも卒業を祝福していった。



「「「「「おめでと~!!」」」」」



終わりを感じさせない祝福の嵐。



そんな楽し気な雰囲気を崩さないように、

磯部先生は4人目の生徒へと歩みを進めていった。



「卒業おめでとう、鈴置美春さん。きみとは何度か会ったことがあるが、こうして話をするのは初めてかもしれないな。」


「あ、はい。そうですね。生徒会の会議とかでは何度かお会いしたことはありますけど、話をしたことはなかったと思います。」



…へぇー。


…そうだったんだ?



僕としては面識があること自体が初耳なんだけど。


どうやら磯部先生と鈴置さんは知り合いだったようだね。



「こうしてきみの卒業を見送るのも何かの縁だろう。あまり話し合えることはないが、きみの卒業も笑顔で見届けさせてもらおうと思っている。」



鈴置さんに対しても最大限の笑顔を見せた磯部先生は、

最後の勲章を手にとってから鈴置さんの胸元に手を伸ばした。



「魔術医師の証である赤十字の勲章。その隣にならぶジェノス魔導学園の勲章。この二つの名誉を同時に手にしたのはおそらくきみが初めてだろうな。」



…ああ、そうかもしれないね。



「え?そ、そうなんですか…?」



鈴置さんは何も知らないようだけど。


長年学園にいる僕でさえ聞いたことがない話だからね。



おそらく磯部先生が言うように、

二つの勲章を同時に手にしたのは鈴置さんが初めてじゃないかな?



赤十字の勲章の隣に並べられたジェノス魔導学園の勲章。


これらは本来ならどちらか一つしか選べないんだ。


仮にマールグリナ医術学園に在籍していたとしても二つの勲章が得られるわけじゃないからね。



「神崎慶一郎でさえも成し得なかったこの結果は、もしかすると歴史的偉業かもしれないな。」


「うわぁ…。色んな意味でやらかしちゃってたんですね…私。」



何も知らずに勝ち得た結果。


その偉業を果たしていたことを知らされた鈴置さんは、

芹澤さん達を戦闘不能に追い込んだうえに通常ならあり得ない選択を実現してしまった自分を恥ずかしく思ったのか照れ臭そうに控えめな笑顔を見せていた。



「私って贅沢ですね。」


「ははははっ!まあ、そうかもしれないが、その贅沢が通ってしまうのが美女の特権というものだろう。」


「…それはどうかと思いますけど?」



…どうなのかな?



僕としては磯部先生の意見に同意したいところだけど、

今は余計な口出しはしないほうが良いだろうね。



「まあ、冗談はさておき、この結果はきみの努力が認められた証になる。それをわがままと思うか実力と思うかはきみ次第だが、二つの勲章はどちらも自分自身の手で掴みとったということだけは忘れないようにな。」


「あ、はい。それはもちろん分かってます。」


「うむ。それさえ分かっていれば問題ないだろう。あとはきみの気持ちひとつだ。」



…ああ、そうだね。



卒業試験の結果を自分自身の実力と判断するか?


それとも中途半端な結果と判断するのか?



それは鈴置さん自身が決めることなんだ。



「卒業とはきみの人生のなかで幾つかある通過点の一つでしかない。これから先の未来に何を見据え、何を得るのかできみの価値は決まっていくのだからな。」


「はいっ。」


「自分で自分を誇れる道を選びなさい。そして自信をもって生きなさい。きみにはそれだけの権利があるのだ。」


「ええ、頑張ります。」


「ああ、応援している。」



鈴置さんの胸元で輝く二つの勲章を眺めてから、

磯部先生は僕達の前から離れていった。



そのあとで。



「改めて言わせてもらいたい。」



僕と敦也と森下さんと鈴置さんの4人をしっかりと眺めてから。



「卒業おめでとう!」



精一杯の笑顔で僕達の卒業を祝福してくれたんだ。


生存者(1)《近藤誠治こんどうせいじ



龍馬の卒業後に自らの意思で学園の学園長を引退してレーヴァへと移住する。


その後は共和国の代表となった龍馬を支えるために近藤家の政治手腕を発揮して周辺各国との外交官として活躍することになる。




生存者(2) 《磯部隆志いそべたかし



近藤誠治が引退した後にジェノス魔導学園の学園長に就任する。


その後、特風を新たに再編して一年後に訪れる常磐成美の入学を『条件付き』で認めることになる。


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