ちょっと…気合いが
「うわ~。可愛いですねっ!」
着替え終えた服装を見て羨ましそうに呟く竜崎雪の瞳が水晶に映る優奈の姿に釘付けになっている。
…確かに、似合っているな。
ピンクのワンピースに白いカーディガンを重ね合わせて新しいリボンで髪を結い直した優奈の姿は旅には相応しくないものの良く似合っているように思えた。
…綺麗だ。
…良く似合ってる。
『で、でも、ちょっと…気合いが入りすぎてる感じが…恥ずかしいですっ。』
まあ、これからデートにでもいくかのような服装だからな。
そんな自分の姿を恥ずかしく思う優奈だが、
その姿には何の違和感もない。
…母が優奈のために選んだ服だ。
…自信をもって着ればいい。
『それは…そうなんですけど…ね。』
新しい服に着替えて綺麗になった鞄を手に持つ優奈の姿は旅に出るというよりも旅行に行ってくるという表現のほうがふさわしい気もするが、
最後の思い出を綺麗な形で迎えるには相応しい服装なのかもしれない。
…後悔のないようにな。
『はい。もちろんです。』
母が用意してくれた服に着替えてからゆっくりと歩みを進めて控え室を出る。
そうして訪れる別れの時を最後まで見届けることにした。




