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THE WORLD  作者: SEASONS
4月11日
478/4820

圧勝?

《サイド:御堂龍馬》


医務室の扉を開いて室内に足を踏み入れる。


そして室内を見渡してみると。


すぐに沙織と翔子の姿を見つけることができた。


「沙織!翔子!」


僕に気付いて振り返ってくれた二人に歩み寄る。


「おはよ~、龍馬!」


見た感じだと翔子は健康そうだ。


「おはようございます」


沙織も微笑みを浮かべている。


「あ、ああ、おはよう。」


いつもと違う雰囲気は感じられない。


「二人とも元気そうだね」


だけど真哉だけは眠りについているようだ。


翔子と沙織に挨拶を返したあとで、真哉に視線を向けてみる。


眠っているというよりは、真哉は意識を失っているのかな?


動き出す気配が全く感じられない。


ここまで真哉が追い詰められているということは、

どうやら本当に翔子が勝ったらしい。


この状況で疑うのは無理があるだろうね。


「さっき淳弥から試合の話を聞いたんだけど…」


「ああ、うん。まあ、何て言うか圧勝?って感じね」


事情を聞こうとする前に、翔子は嬉しそうに語りだした。


「何だかんだ言っても、真哉じゃ私に勝てないってことよ。魔術乱舞で軽くぶっ飛ばしてあげたわ」


笑顔を浮かべながら楽しそうに話す翔子だけど、

沙織は呆れ顔でため息を吐いていた。


「ねえ、翔子?試合内容はともかく。結局、最後に倒れたら圧勝とは言えないんじゃないかしら?『結果』だけを見れ引き分けと判断されても仕方がないのよ?」


「え~っ!?」


沙織の指摘が不満だったのかな?


翔子は真哉を睨んでいた。


「ちゃんと勝ったのに~」


うーん。


どうなのかな?


何があったのかは知らないけれど。


沙織の指摘が正しいとすれば、

翔子が言うほど簡単な試合ではなかったようだ。


だから僕は事情を知ってる様子の沙織に問い掛けてみることにした。


「沙織は知ってるのかい?」


「ええ、一番近くで見ていたわ」


一番近く?


…と言うことは。


沙織が審判をしていたのかな?


「思い出せる範囲で教えてほしいんだけど、聞かせてくれないかな?」


「ええ、いいわよ」


僕の願いを聞き入れて、沙織は詳細を説明してくれた。


まずは食堂でのいきさつから始まり。


悠理と深海さんと合流したこと。


そして検定会場に移動して試合が行われた。


二人のルーンとそれぞれの魔術。


翔子の活躍と真哉の敗北。


メテオストライクという魔術がどういうものなのか少し興味があったけれど。


翔子の言葉を信じるなら圧縮魔術による無差別攻撃ということかな?


一撃ごとの威力は通常の魔術並だとしても、

秒速で放たれる連続攻撃はさすがの僕でも耐え切れるかどうかはわからない。


状況次第では一撃必殺のアルテマよりも厄介かもしれないね。


最終的に試合後に彼が現れて、

翔子と真哉を治療していったところまでを沙織は説明してくれた。


「…ということよ」


「なるほど。大変だったね」


翔子はほぼ一方的に攻撃していただけのようだから特に怪我とかはないようだけど。


攻撃を受けた真哉は相当痛い思いをしただろうね。


だとすれば今ここでこうして気を失っているのも仕方がないとは思う。


「大体の事情はわかったよ。まあ、彼が治療をしてくれたのなら真哉のことも心配する必要はないだろうね」


「ええ、そうね。」


彼の治療技術は沙織以上だからね。


沙織もこうして落ち着いていられるのは彼の協力があったからだと思う。


だけど、肝心の翔子は彼がいたことさえ知らないようだった。


「でもね~。私はその辺りのことを覚えてないのよね~」


何も覚えていない様子の翔子を見て、沙織は苦笑している。


「本当に何も覚えてないの?良く頑張った、って褒めてくれてたのよ?」


「え~?そうなの?う~ん。思い出せないわ」


「あらあら、残念ね」


頭を抱える翔子を見て微笑む沙織。


僕は一通りの話を終えて一息吐いている。


そんな僕達の背後で、静かに動き出す気配があった。


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