分かりますか?
時刻は午後5時42分。
徐々に空が暗くなり始めて、
商店街の人通りが少しずつ減り始める頃。
優奈の両親が経営する花屋でもすでに閉店の準備が始まっているようで、
店先の植え木鉢を片付ける作業を繰り返す常磐成美と矢野霧華の二人に優奈が近づいていった。
「こんにちわ、常磐成美さん。」
「…えっ?」
突然名前を呼ばれたことに驚いたのだろう。
慌てて振り返った常磐成美に優奈が歩み寄っていく。
「私のこと…分かりますか?」
「…え、え~っと…。その~…?」
こうして出会うのは初めてだからな。
優奈を思い出せずに戸惑いの表情を浮かべている。
そうして突然の出来事に戸惑う常磐成美が仕事の手を止めたことで傍に居た矢野霧華が不満をあらわにして文句を言おうとしていたのだが、
その前に常磐成美は申し訳なさそうに頭を下げて謝罪していた。
「…す、すみません。覚えてないです…。どこかでお会いしましたでしょうか?」
初対面だから覚えがないのは当然なのだが、
それでも気にかかる部分はあるようだった。
「何となく懐かしい感じはするんですけど…。」
「あ…。良かった。」
懐かしさを感じると答えた常磐成美の返事を聞けたことで、
優奈は少しだけ嬉しそうに微笑んでいた。




