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周りを気にする余裕
『ガキィィィィン!!!』
激しい衝突音を響かせながら試合場の中心で交差する二つの刃。
互いの神剣が火花を散らして吹き荒れる衝撃波が薫と美春の結界を揺さぶるが、
二人の防御結界は衝撃波程度では亀裂一つ入らなかった。
「良い結界だな。」
「…周りを気にする余裕も相変わらずだね。」
御堂は表情を歪めながら皮肉を呟いている。
「僕はこれでも全力で斬りかかったつもりなんだけどね…。」
…全力、か。
今も必死に力を込める御堂の神剣からは膨大な魔力が放たれているのだが、
それでも俺を突き抜けることができなかったらしい。
「これで全力のつもりか?これならまだ北条のほうがましだな。」
「くっ!?」
俺の指摘に対して反論できなかったのだろうか。
「………。」
御堂はあっさりと黙り込んでしまっていた。
…これでは駄目だな。
どうやらまだ試練が足りなかったようだ。
落ち込んだ表情を目にしたことで互いの実力差が分かってしまった。
だからこそ御堂をさらなる境地に歩ませるために、
一時的に後退して距離をとることにした。




