もっと大切な人
「まさか、まさかここできみに会えるなんて…思ってもいなかったよ。」
今までどこでどうしていたのか?
そんなふうに聞きたいことが沢山あるはずの御堂だが、
それらを問われてしまう前に話を逸らそうと考えたのだろう。
今度は優奈から話しかけようとしていた。
「ずっと竜崎さん達に匿ってもらっていたんです。どうしても共和国に戻れない事情があって…今まで竜崎さん達に保護していただいていたんです。」
「あ、ああ、なるほど…。そういうことだったのか。だから竜崎さん達はきみや総魔のことを知っていたんだね。」
「は、はい。そうです。」
「それで、その事情って言うのはもう解決したのかい?」
優奈が身を隠さなければならないほどの事情を気にする御堂だが。
心配しなくてもすでに全ての条件は整っている。
「ええ、全て終わりました。だから私はここにいられるんです。御堂先輩の卒業を見守るために。そして御堂先輩の旅立ちを見送るために。そのために帰ってきたんです。」
「僕のために?」
「はい。そうです。御堂先輩の最後の試験を見守るために、です。」
「僕の…最後の?」
優奈の言葉を聞いた御堂の表情が驚愕から焦りへと徐々に変わっていく。
これはおそらく、一つの考えにたどり着いたからだろう。
「まさか…っ!?まさか僕の最後の対戦相手は…きみなのかいっ!?」
「…い、いえ。それは違います。」
御堂は今まで情報が隠されて明らかにされなかった10人目の対戦相手が優奈だと考えたようだが、
優奈は即座に否定していた。
「御堂先輩が戦う相手は私ではありません。」
「え?深海さんじゃないのかい?」
「はい。御堂先輩が戦うべき人は他にいますから。」
「で、でも、他に考えられる人なんて…?」
優奈を除いたうえで竜崎達を除外すれば残る戦力は薫と美春しかいない。
「まさか栗原さんか鈴置さん…なのかい?」
「…いえ、違います。」
他に選択肢がないと考える御堂の考えも優奈は否定してしまう。
「もっと…もっと大切な人です。」
「…え?」
決して答えは出さずに。
御堂自身に気づかせようとしている。
そうして優奈の指摘を受ける御堂の表情が困惑に変わる中で、
『コツン』と静かな足音が検定会場に鳴り響いた。




