幻想を打ち破る
「ようやく気づけたようですね。」
「あ、ああ、やっと理解できたよ。」
無事に答えにたどり着いたことで微笑みを見せる竜崎雪の笑顔と向き合う御堂は、
ようやく自らの心に気づいたようだった。
「僕は…ちゃんと向き合っていたんだね。」
「ええ、そうです。私はそうだと思いますよ。」
御堂の言葉を肯定しつつ言葉を続けていく。
「あの方が決して歩みを止めないことと同じように、貴方も歩み続ける覚悟を示したと思います。」
「これはそのための試練だったんだね。」
「はい、そうです。ただ単純に常盤沙織さんを消しされば良いということではなくて、あの方と同じ覚悟を示すこと。それが今回の試練の目的でした。」
「ああ、そうみたいだね。きっと総魔なら迷わない。そして必ず幻想を打ち破るはずだ。」
「ええ、私もそう思います。」
「…だろうね。」
俺を超えるという絶対的な目標を掲げる御堂はようやく試練の意味に気づいて再び立ち上がる意志を取り戻したようだった。
「僕はまだ戦えるよ。ありがとう、きみのおかげだ。」
「いえ…。私は貴方を苦しめているだけですから…。」
御堂の感謝の気持ちに対して罪悪感を感じる様子の竜崎雪だが、
それでも御堂は全ての憎悪を捨て去って純粋に感謝の思いを言葉にしていた。
「そんなことはないよ。ありがとう。きみのおかげで僕はまだ頑張れるんだ。」
沙織を消し去った罪の意識は今でもまだ御堂の心の中にあるはずだが、
それでも御堂は立ち上がる気力を取り戻したように見える。
「まだ…諦めるわけには行かないんだよ。」
俺にたどり着くために。
そして俺を乗り越えるために。
御堂は記憶の中にある俺の姿を思い描きながら、
ゆっくりと体を起こして立ち上がった。




