その理由さえも
「悲しいと思う気持ちは私にも分かります。」
誰しも大切な人を傷つけたいとは思わないからな。
涙を流すことが間違いだとは思わないだろう。
「ですが…ですがそれでも立ち上がってください。それが貴方の役目です。」
「僕の役目か…。きみが何を望んで僕に何をさせようとしているのかはわからないけれど…。だけど僕はもう僕のことがわからないんだ。どうして沙織の体に剣を向けたのか?どうして沙織を傷つけようとしたのか?その理由さえもわからないんだよ。」
「貴方は…貴方は守ろうとしたのではないのですか?」
常磐成美を守るために。
常磐成美に悲しい思いをさせないために。
「自らの手で決着をつける覚悟を示したのではないのですか?」
「…分からないんだ。本当にそうなのかどうかさえ、僕にはわからないんだ。自分でもどうしてこうなったのかがわからないんだよ…。だけど気づいた時には体が反応していたんだ。それがどうしてなのかはわからない。だけど…だけど僕は…。」
「常磐沙織さんを消しました。」
「………。」
竜崎雪の指摘を受けて黙り込んでしまう。
そうして落ち込んでしまう御堂の姿に哀れみを感じたのだろうか。
「これではダメですね。だからもう少しだけ話し合う必要がありそうですね。」
再び失意を込めた瞳で、
竜崎雪は倒れたままの御堂に話しかけた。




