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THE WORLD  作者: SEASONS
5月15日
4712/4820

漆黒の宝石

「それでは、次の試合もちゃんと乗り越えてくださいね。」



明るく微笑みながら御堂の勝利を願う。


その笑顔の裏に隠された真実を把握しきれない御堂は何もわからないまま開始線に立っている。



「えっと…。これからどうするつもりなんだい?」


「…ん~。」



幾度となく問いかける御堂だが、

それでも竜崎雪は答えない。



「見ればわかりますよ♪」



曖昧に答えつつ試合開始を待つ。


その間に審判を継続する竜崎慶太が試合を始めようとしたのだが。



「…試合の前に話したいことがあるのだが、少し良いだろうか?」



意識を取り戻して行動を再開した黒柳が試合場に歩み寄ってきた。



「これからどうするつもりなのかは知らないが、試合を続行するつもりがあるのなら少しだけ待ってもらいたい。」



試合の一時中断を願う黒柳は、

西園寺つばめと藤沢瑠美を呼び寄せながら説明を続けていく。



「試合を継続してもらうのは構わないのだが、現在この試合場は使用不可能な状態にある。」



…まあ、そうだな。



「遠回しな表現では伝わりにくいだろうから単刀直入に言うが、さきほどの宗一郎さんの魔術によって試合場を保護する結界が破られたために、このままの状態で試合が続行された場合に全ての魔術が会場全域に氾濫してしまうだろう。」



御堂と宗一郎の試合の最中に目覚めていた黒柳は試合場の結界が崩壊する瞬間を見ていたようだな。


最悪の場合、この会場が全壊する恐れがあるということだ。



「このままでは会場もそうだが、試合を見届ける立場の俺達まで被害を受けかねない。」



無理に試合を続行すれば誰かが被害に巻き込まれることになるだろう。


だからこそ黒柳は試合続行の条件として一つの方法を提案しようとしていた。



「このままの状態では御堂君が全力で戦うことができない…というよりも認められないというべきか。そこで一つ提案なのだが、俺と西園寺君と藤沢君の3人で試合場を包み込む結界を展開しようと思う。」


「黒柳さん達が…ですか?」


「ははっ、心配しなくて良い。こんなこともあろうかと考えて、すでに手はうっていたからな。」



…もうアレの出番か。



たった3人では結界の効果があまり期待できないと思う御堂だが、

黒柳にしても西園寺つばめにしても藤沢瑠美にしても本来は試合に参加するためにこの場所にいるわけじゃない。



黒柳達の目的は別にあり。


本来の目的は結界の展開にある。



「各学園…と言えるほどの数ではないが、ジェノス周辺にある4つの町の学園から、学園の機能を維持するための力の源である魔石を借りてきた。それがこれなのだが…。」



黒柳の両手にある漆黒の宝石。


西園寺つばめが持つ漆黒の宝石。


そして藤沢瑠美が持つ漆黒の宝石。



計4つの魔石を公開した黒柳は、

御堂の心配を払拭するために結界の説明を続けた。



「この魔石を使えば俺達3人でも数万人分の魔力を使うことができる。…と言っても、俺達に用意できる機材の関係で結界の展開が精一杯なのが実情になるが、それでもグランパレス級の防御結界を一時的にだが展開できるはずだ。」


「媒体を使用することで…ということですね。」


「ああ、そうだ。」



説明を理解して納得した様子の御堂を見て、

黒柳は笑顔で頷いた。



「ただ、これにも限界がある。」



御堂の力はグランパレスの防御結界を突き抜けることがすでに実証されているからな。


その辺りの可能性を考慮しつつ完璧な防御結界を展開しようとすれば、

それ相応の魔力が必要になるだろう。


それこそ数百人分の魔力が一瞬にして消え去るはずだ。



「つまり、媒体を使用しても長時間の戦闘は不可能…ということですか?」


「そうなるな。きみの力と竜崎雪君の力。それがどれほどなのかは正直俺にも想像できない。だが、結界に負荷がかからなければそれほど魔力を浪費することはないはずだ。」



結界に魔術が直撃しなくても戦闘を行う限りは負荷がかかり。


魔石の魔力は急速に失われていくということだ。


一撃ごとの負荷に対しての魔力の消費は計り知れないが、

試合全体で見ればそこまでの負荷はそうそう何度もかからないだろう。



「これが並みの魔術師であればそこまで考える必要はないのだが、きみ達が戦うとなれば魔術の余波だけでも会場を吹き飛ばせる威力があるだろうからな。必然的に戦える時間は限られてくる。」


「最短でどの程度なのですか?」



全力で暴れた場合に結界はどの程度まで持ちこたえられるのか?



「もって3分だろうな。」



4つの魔石の合計で12分。


おそらくその辺りが限界になるのだろう。



「これは宗一郎さんの一撃を考慮した上での計算であり、きみ達がそれ以上の力を発揮した場合は…。」


「…さらに短くなる?」


「…かもしれない。」



黒柳といえども答えられない質問。


実際にどこまで結界が持ちこたえられるかはやってみなければわからないという結論に至った。



「まあ、万が一にも魔石が力を失って結界が消失することがあっても、その時は俺達や竜崎達が結界の展開に全ての魔力を注ぎ込むだけの話だ。」



その結界にどの程度の意味があるかは別問題だがな。



「………。」



さすがの黒柳達も魔石の魔力を補うほどの力は持っていない。


そして竜崎達が全力で結界を展開してとしても御堂の魔術を抑えることができないことはすでにグランパレスで実証されている。



「魔石の力が失われた時点であらゆる防御結界が意味を失うだろう。だからそうなる前に全ての試合を終わらせることを祈るしかない。」



限りある時間で全ての試合を終わらせること。


それを条件として黒柳は試合続行の許可を出した。



「どうにか結界が維持できる間に試合を終わらせてくれ。もしそれが無理だと判断した場合は…それ相応の判断をとらせてもらうことになる。」



場合によっては御堂の卒業試験の中止もありえるということだ。



「俺からの説明は以上になる。」



最悪の判断に至る可能性を示した黒柳は結界に関する説明を終えた。


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