運も才能の一つ
「これが雷を支配するということだ!!」
雷帝を名乗る長野敦也でさえまだ到達していない神の領域。
これはもう文字通り『天罰』とでも表現すべき攻撃だった。
…さすがにこれは桁違いだな。
今の俺では扱えない力。
究極の雷が御堂に降り注ぐ。
「これが共和国代表の力だ!!」
かつて共和国全土にその名を知らしめた最強の魔術師。
過去の名声が偽りではなかったことを証明する宗一郎の攻撃によって、
試合場を包み込む防御結界が急速に歪んでいく。
…これは無理だな。
どう足掻いても学園の結界では抑えきれない威力だ。
…結界が崩壊する。
ホンの数秒さえ持たずに吹き飛ぶ結界。
試合場を包み込んでいた防御結界が完全に消え去った直後に宗一郎が生み出した光も消えていった。
「…御堂君はどこだ?」
光が強すぎて見失ってしまったのだろう。
御堂の姿が確認できていないことで、宗一郎は周囲を見回している。
…魔力の波動が感知出来れば良いんだが。
宗一郎がどの程度の感知能力を持っているのかが分からないうえに、
全力で攻撃を放った直後だからな。
集中力が乱れるのは仕方がないと思う。
…気付けるか?
絶対の自信を持つ魔術を放った直後の僅かな時間。
ホンの一呼吸程度の僅かな時間を『様子見』として浪費した宗一郎の背後から…御堂が全力で斬りかかった。
「アルティメット…!」
「な…にっ!?」
「…ドライブっ!!!」
「ぐっ!?がはっっっ!!」
一瞬だけ鳴り響いた爆発音が会場全域に轟くのとほぼ同時に、
口から血を吐き出した宗一郎が御堂の一撃を受けて試合場に倒れた。
…形勢逆転だな。
「くっ…。まさか背後をとられるとは…なっ。」
「で、でも、やっぱり…無理があった、かな…。」
前方にいると思い込んでいた御堂に背後をとられたことを悔しがる宗一郎だが、
反撃に出た御堂も決して無事とは言えない状態のようだった。
「たまたま吹き飛ばされた場所が米倉さんの側面だったから回り込めただけで…僕自身の意志で立ち回れたわけではないんです…。」
「はっ…ははっ…。なるほど、な…。そういうことか。」
偶然だったと聞かされた宗一郎だが。
「運も才能の一つだ…。天は…神はきみを選んだということだろう…。」
偶然をつかみとる幸運さえも才能だと判断したようだな。
「俺の敗けだ…。きみの勝利を…認めよう…。」
決して言い訳はせずに、
御堂の勝利を宣言してから倒れた。




