本職
「きみの実力は魔術大会でも見させてもらったが、魔術の才能だけが戦闘技術の全てではないことをみせよう。」
油断なく剣を構える近藤悠輝の動きには一切の無駄がなく。
ゆっくりと立ち位置を変えながら隙を窺う姿は間違いなく一流の動きだった。
…やはり本職は違うな。
単なる魔術師としてではない軍人としての正規の訓練を受けた戦士の気迫がこれまでとは違う威圧感を生み出しているからだ。
これなら俺の予想通りの展開になるかもしれない。
「魔術の破壊力では到底きみに敵わないが、勝負の行く末を決める力はそれだけではない。」
じりじりと距離を詰めながら御堂の動きを見定める。
互いの実力を考慮すれば一度でも読み間違えれば簡単に追い込まれかねないからな。
余裕を見せている場合ではないだろう。
確実に敵を倒すという気迫が漂うなかで、
御堂も迎撃の好きを窺っていた。
「確かに僕は何の訓練も受けていない一般人です。ですが、それでも負けるつもりはありません。例え立場が違うとしても、戦場で戦い抜いてきた経験とこの手で犯してきた罪は貴方達と何も変わらないはずです。」
訓練を積んでいるかどうかに関わらず。
戦場で生き抜いてきた実力はどちらも同じでありどちらも同罪だと考えているのだろう。
「試合に勝って証明して見せます!」
魔術の実力だけでここまで来たわけではないことを。
そして魔術の破壊力だけで戦争に勝利したわけではないことを。
自らの手で証明するために。
「僕は僕の力を示すだけです!!」
御堂も一人の剣士としてルーンを構えた。




