僕の選択
「ぐっ!?ああああああああっ!!!」
口から吐血して試合場にうずくまる。
御堂の腹部から突き抜けた刃が背中から飛び出して、
貫かれた傷口からは真っ赤な血が溢れ出していく。
「なっ…何を…っ!?」
突然の事態に動揺する琴平重郎だが、
御堂は傷みを堪えながら微笑みを返そうとしていた。
「これが…僕の選択です…。僕には琴平さんを救えません…。そして僕は僕自身を治療することさえできません…。だから…だから、お願いします。僕を…貴方の手で…助けてください…。」
御堂には琴平重郎が救えない。
そして自らを治療する術もない。
そんな自殺行為によって、
琴平重郎の救いを求めようとしていた。
「貴方なら僕の治療ができるはずです…。貴方自身の体を救い、僕の体も救えるはず…です。」
琴平重郎がこのまま力尽きれば御堂の治療は行えない。
そして御堂の命が失われれば共和国の未来は再び道を見失うことになる。
「きっと…きっと竜崎さん達は動きません…。もしも動くつもりがあるのなら、すでに貴方を助けているはずだから…。だけど誰もここに足を踏み込もうとしないのは、僕や…貴方を…信じてくれているからだと思います…。」
竜崎雪は手を貸さない。
長野沙弥香も動かない。
宗一郎も動かずに。
西園寺つばめや藤沢瑠美も動かない。
その理由こそが信頼なのだと御堂は感じているようだな。
「僕を…救えるのは、貴方だけです…っ。」
互いに瀕死の重症。
「僕は…貴方を…信じます…。」
極限の状況を作り上げた御堂は琴平重郎を信じながら試合場に倒れ込んだ。




