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THE WORLD  作者: SEASONS
4月11日
467/4820

試合の理由

《サイド:深海優奈》


最後の検定会場と呼ばれる第1検定試験会場。


何となくですが、

この会場に来るのは何故か久しぶりな気がしますね。


実際に二日ほど来てませんでしたので、

そう思うのは当然なのかもしれませんが、

こうしてここに来てみると少し緊張してしまいます。


一応、生徒番号的には私も所属しているのですが、

気持ち的には最初の会場のほうが私にはあっていると思うからです。


まだまだ自分に自信なんて持てません。


そんなことを考えながら歩き続ける私の視線の先で、

翔子先輩と北条先輩は受付で試合の手続きを行っているようです。


「はあ…。」


二人の後ろ姿を呆れ顔で見守る常盤先輩の表情には疲労感が漂っていますね。


「大丈夫ですか?」


「ええ。私は大丈夫よ」


心配して尋ねてみると、

常盤先輩はため息を吐きながらも微笑んでくれました。


「こうなったらもう仕方がないから大人しく見守ることにするわ」


諦めるような口調です。


ですが、常磐先輩なりに思うことがあるようでした。


「でも、ね。」


小さく呟く常磐先輩の声に、私と悠理ちゃんは耳を傾けます。


「翔子は決して馬鹿じゃないわ。自分の実力と相手の実力を正確に計れるだけの冷静さは持ってるはずなのよ。私はそう思ってるわ」


相手の実力を測れるだけの冷静さ…。


小さな声で紡がれた言葉には、

とても強い想いが込められているような気がしました。


きっと、本気で翔子先輩のことを信じているんだと思います。


「たぶんね。翔子は何かを確信してるんだと思うわ。北条君に勝てる何かをね。そうでなければ翔子は絶対に試合を受けなかったはずよ。それを…そのことを北条君も気付いてると思う。だからこそ北条君は試合がしたいんだと思うわ。翔子がどれだけの力を手に入れたのか?そして自分の力はどこまで通じるのか?それを確認したいんだと思うの」


確認するための試合…ですか。


試合の理由を説明してくれた常盤先輩の表情からは

不安と期待が混ざっているような、そんな雰囲気を感じてしまいます。


「常盤先輩はどっちが勝つと思いますか?」


尋ねる悠理ちゃんに、

常盤先輩は微笑みを返しています。


「沙織で良いわよ。常盤って言いにくいでしょ?」


呼び方を訂正しただけで、

悠理ちゃんの質問には答えてくれなかったんです。


…ですが…


沙織先輩の視線は翔子先輩に向いているような、そんな気がしました。


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