第3試合には
試合場で倒れた藤沢瑠美の体を西園寺つばめが回収して場外まで運び出していく。
その作業の最中に黒柳が宗一郎に話しかけた。
「次は俺の出番ですね?」
「…ああ、そうなるな。」
西園寺つばめと藤沢瑠美が参加したことで次は自分だと判断したのだろう。
その考えは正解で、第3試合には黒柳に出てもらうつもりでいた。
「そのつもりだが、頼めるか?」
「ええ、任せてください。今回の試験に関して詳しい事情は知りませんが、今までの試合を見ればおおよその検討はつきますから。」
…さすがだな。
やはり黒柳だけは俺の目的に気付いているようだ。
「…すまない。大悟にもつらい役目を背負わせてしまうことになる。」
「いえ、大丈夫です。それにこれは俺達にとっても必要な試練だと思いますから。」
「…すでに気づいているのだな?」
「ええ。御堂君に何を教えて自分が何をするべきなのか。その答えはもう分かっています。」
「…もはや今の自分には戻れんかもしれんぞ?」
「それはそれで仕方がありません。…いえ、こういう言い方は違いますね。この試験はもはや御堂君のためだけの試験とは言えないでしょう。これは御堂君を育てると同時に俺達自身の成長も望まれて計画されている…と、考えています。」
…そこまで気づいているのか。
俺の計画を知っている宗一郎でさえ藤沢瑠美の試合を見るまで気づかなかった裏の目的を黒柳は自力で気づいたらしい。
「ははっ、やはり大悟は見抜くか。」
「彼が仕組んだ計画には多目的な意味が隠されています。」
…ああ、そうだ。
西園寺つばめには理論だけでは解決できない現実を突きつけて。
藤沢瑠美には知略だけでは制することのできない力を見せつけて。
黒柳には過去と向き合う機会を与えるつもりでいた。
「それぞれの弱さを露呈させることで次に向かうべき道を示す。それがこの試験の裏に隠された本当の意味ではないですか?」
「さすがだな、大悟。」
俺の考えを正確に把握して話し合う。
黒柳の指摘を正解だと判断する宗一郎は、
ホンの少しだけ笑みを浮かべてから優秀な部下の推理力を褒め称えた。
「全て正解だ。だからこそ、このあとに続く者達にも相応の試練が待っている。」
「俺と残り7人ですね。」
「ああ、そのようだな。」
最後の一人にたどり着くまでに御堂がどこまで成長できるのか?
そして黒柳達はこの戦いの先に何を見いだすのか?
「戦いの結末を俺達自身で見届けよう。」
「はい。」
藤沢瑠美が場外に運び出されたことで再び御堂一人になった試合場を眺める黒柳が新たな戦いに挑む覚悟を見せる。
「それでは行ってきます。」
自らの魔術で体を治療する御堂を見つめながら試合場へと一歩を踏み出していく。
その鬼気迫る迫力に気付いた御堂が真剣な表情を見せたことで。
「…さあ、次の試合を始めよう。」
宗一郎が3試合目の進行を開始した。




