望むべき敗北の形
「………。」
「………。」
藤沢瑠美の態度を注意することもなく黙って様子を見る宗一郎と黒柳。
そんな二人の視線の先で御堂が攻撃を開始する。
「行きますっ!ダンシング・フレア!!」
「…ファイアー・ウォール!!」
激しく燃え盛る炎を生み出して狙いを定めた御堂だったが、
即座に魔術を展開した藤沢瑠美の防御結界に遮断されて瞬く間に消え去ってしまった。
「ん~。私も女の子だから火傷はちょっとね~。」
自分が望むべき敗北の形ではないと考えたのだろう。
とっさに防御した藤沢瑠美によって御堂の攻撃は失敗に終わっていた。
「それならっ!テスタメント!!」
今度は膨大な冷気を生み出すことで藤沢瑠美の体を凍結させようとしたようだな。
吹き抜ける冷気が藤沢瑠美に迫るのだが。
「…ウインド・ストーム!!」
再び魔術を展開した藤沢瑠美によって、
全ての冷気が別の方角へと押し流されてしまった。
「痛くないのは嬉しいけど、どちらかと言えば冷たいのも苦手なのよね~。」
「………。」
単なるわがままにしか聞こえない発言を繰り返しながら立て続けに魔術を回避した藤沢瑠美は、
再び御堂に願いを伝えようとしていた。
「痛みを感じないくらい一瞬で気を失える魔術とかがいいな~。」
「…分かりました。それでは全力で攻撃します。」
試合とは思えない要望だが。
無理難題を押し付けられた御堂は、
藤沢瑠美を一撃で倒すために左手を頭上に掲げてみせた。




