二人目の名前
「それでは次の試合を始めようか。」
西園寺つばめが退場になったことで御堂だけが残された試合場。
そこに立つべき次の人物を指名するために宗一郎が二人目の名前を宣言する。
「次はきみの出番だ。藤沢瑠美君。」
「うわぁ。やっぱり私なんですね…。」
指名を受けた瞬間にあからさまに嫌そうな表情を見せた藤沢瑠美も控えめに抵抗を試みようとしていた。
「つばめが呼ばれた時点でそんな予感はしてましたけど、どうして私なんですか?私は戦闘は不得意ですし、御堂君が相手では手も足も出せないと思うんですけど…?」
「ふむ。戦闘は不得意…か。」
自分では何もできないと必死に訴えているが、
宗一郎は楽しそうに微笑んでから藤沢瑠美の抗議を却下した。
「残念だが、きみの『訴え』を聞き入れるつもりはない。」
「………。」
藤沢瑠美の意見を却下した宗一郎は、
西園寺つばめの時と同様にほぼ強制的に参加を命じていく。
「きみが参加することにはちゃんと意味がある。だからこそきみも『きみらしく』全力で戦えば良いのだ。」
「…まさか今さらそこを指摘されるとは思っていませんでした。」
藤沢瑠美の抵抗を却下して試合への参加を強制する宗一郎の考えが何なのか?
その答えと意味を理解したようだな。
宗一郎が自分に求めているものをはっきりと自覚した藤沢瑠美は、
ため息混じりに呟いてから試合場にいる御堂に視線を向けた。
「つばめが相性なら、私は虚偽ですね。」
「さすがは分析班の責任者だな。」
御堂には聞こえない程度の声で確認をとる藤沢瑠美の指摘を宗一郎は即座に認めていた。
「御堂君は確かに強い。だがそれだけで戦いに勝てるわけではない。戦闘能力の相性では西園寺君が優位であり、情報操作に関してはきみが遥かに優位にある。」
「その油断を自覚させるためには私が必要…ということですか。」
「そういうことになるな。」
「…分かりました。どこまで出来るかは分かりませんが、ご期待に添える努力はさせていただきます。」
「うむ、きみ達には期待している。」
複数の人物に対して期待を寄せる宗一郎。
その期待を受けるもう一人の人物は必要以上に話をせずに、
自分の出番が来るまでのわずかな時間の間に可能な限りの準備を始めていた。




