職務であるのなら
「そ、その…。自分でいうのもなんですけど、私では御堂君の対戦相手として役不足だと思いますが…?」
何故自分が呼び出されたのか?
その意味の理解に苦しむ様子の西園寺つばめだが。
「きみはきみの持てる力を存分に発揮すれば良い。ただそれだけで良いのだ。」
宗一郎は笑顔を浮かべながら強引に西園寺つばめの背中を後押ししていく。
そして西園寺つばめを残して場外に歩みを進めてしまった。
「…ど、どうしましょう?」
「…まあ、どうしようもないな。」
全くといって良いほど何の説明もないまま試合場に取り残された西園寺つばめは最後の頼みの綱として黒柳に助けを求めていたのだが、
黒柳も事情が把握できていないために何も言えない様子だった。
「理由はさておき、こうなった以上はやるしかないだろう。きみの実力では御堂君には遠く及ばないが西園寺君なりに全力で戦うしかない。」
他に方法はないと考えて場外から見守る。
そんな二人の会話を耳にしながらも傍観を決め込む宗一郎は、
何も語らないまま西園寺つばめが覚悟を決める瞬間を待っていた。
「出来れば…というか、絶望的に戦いたくないのですが…。これも職務であるのなら、ご指示には従います。」
ルーン研究所の副所長としての意地を見せて御堂との試合を受け入れたようだな。
西園寺つばめの小さな勇気を確認した宗一郎は、
ほぼ強制的に試験を進めながら本人の合意を得たことにして計画を進めていく。
「それでは双方の合意を得たということで試合を始めさせてもらおうか。」
高らかに右手を掲げて審判を務める。
その手が勢いよく振り下ろされると同時に。
「試合始めっ!!!」
ついに御堂と西園寺つばめの試合が宣言された。




