分刻みの行動
…宗一郎、聞こえるか?
『ああ、もちろんだ。』
検定会場の奥に潜む俺達とは真逆に位置する会場の受け付け付近にいる宗一郎に話しかけてみるとすぐに返事をしてくれた。
『こうして話しかけてきたと言うことは、どうやらお互いに間に合ったようだな。』
…ああ。
御堂の卒業試験が迫る状況で検定会場に集まることができたのは事実だ。
…どうやら必要な人材は全て揃ったようだな。
『まあ、この辺りが限界だろう。情報を必要最小限に押さえていたからな。これ以上の頭数を揃えるのは難しいというのが実情だが…。それより、きみ達は今どこにいるんだ?』
試験開始の時刻が迫る状況で、
まだ俺の考えた試験内容が宗一郎には伝わっていないせいだろう。
あせりを感じ始める宗一郎と一度話し合う必要がある。
…今は会場奥の用具室に身を潜めている。
…ひとまず今後の予定を伝えたいんだが、合流できそうか?
『ふむ。今ならまだなんとかなるだろう。あまり多くの時間はとれそうにないがな。』
…まあ、そうだろうな。
御堂達から離れることができるかどうかを確認してみると、
宗一郎は制限時間つきでこちらに来れると答えた。
『黒柳に事情を説明して御堂君を引き留めるように手配しておくつもりだが、それでいいか?』
…ああ、そうしてもらえると助かる。
『良し、任せておけ。黒柳もきみには寛大な男だからな。喜んで時間稼ぎを引き受けるだろう。まあ、お互いに分刻みの行動で忙しい身だが、できる限り迅速に対応させてもらうつもりだ。』
…すまない。
『ははっ。気にするな。出来るだけ早くそちらに向かうから、それまで待っていてくれ。』
…ああ、分かった。
午後4時が迫る状況で通信を終える。
その後、宗一郎は黒柳と接触してから迅速な動きで検定会場を通り抜けて、
最奥に位置する用具室まで会いに来てくれた。




