私はまだ見習い
「どうにか無事に終わったわ。」
試験を終えた美春が笑顔で戻ってきた。
卒業そのものはのちほど行われる修了式を終えてからになるのだが、
美春の胸元にはすでに魔術医師としての証である赤十字の勲章が飾られている。
「良かったな。」
「おめでとうございますっ♪」
「おめでと~!」
卒業を喜ぶ美春を出迎えると、
優奈と薫も美春の卒業を祝福していた。
「とっても素敵ですっ♪」
胸元に飾られた勲章を眺めながら美春を称える優奈。
そんな優奈の隣では薫も笑顔を見せていた。
「これで鈴置さんも魔術医師の仲間入りね~。」
「あ~うん。まあ、そうなるのかしら?個人的にはまだまだ自信がないんだけど、これで私も栗原さんと同じ職業っていうのは何だか不思議な感じがするわ。」
「そう?まあ、魔術医師っていってもその内訳は色々あるし、ざっくりひとまとめに呼んでるだけだから、そんなに難しく考えることはないと思うわよ。私は総合職だけど鈴置さんは薬剤と治癒系だし、自分の専門分野さえちゃんとできていればそれで良いんじゃない?」
「…そういうものなの?」
「さあ?私はまだ見習いだからはっきりとは言えないけど、自分が医師だと思えるならそれで良いんじゃない?」
「………。」
まだ証を持たないという理由で自分は見習いだと説明する薫だが。
「栗原さんで見習いなら、私はまだまだ駆け出しだと思うわ。」
美春はさらに自信をなくした様子だった。
「確実に栗原さん以下だし…。」
「あ、いや、その…。そんなふうに落ち込まれると困るんだけど…。私だって兄貴には負けると思うし…。」
医師としての実力は薫に劣ると考える美春によって、
薫も落ち込んだ様子を見せていた。
「ま、まあ、上には上がいるのは分かってるし…。特別な一番になりたいわけじゃないから別に良いんだけどね…。」
まだ正式な魔術医師として認定されていない上に自分よりも優秀な医師を知っているからだろう。
美春と同じような気持ちを感じる薫も深くため息を吐いている。
「どうせ私も兄貴や神崎さんに比べれば確実に下なんだし、自信がないのは同じなんだけどね…。だから鈴置さんが思うほど、そんなに凄くないと思うわよ?」
「それでも私より優秀なのは間違いないわ。」
「う~ん…。」
自分はまだ尊敬されるほどではないと考える様子の薫だが、
美春は苦笑しながら薫の実力を褒め称えていた。
「栗原さんが私の目標よ。」
「そう?」
「ええ。」
医師として目指すべき目標はあくまでも薫であると宣言してから、
美春は改めて全員の顔を眺めた。
「これでもう思い残すことはないわ。だからこれからは…」
一拍の間をおいて。
気持ちを整理してから。
「これからはみんなと一緒にどこにでも行くわ。」
美春も旅立ちを決意した。




