手に入れられない称号
…ふぅ。
…俺と優奈には手に入れられない称号か。
学園の卒業生という証は決して手に入らない。
その事実に気づいている薫はどう話しかければ良いのか分からないように見えた。
…薫には手の届く称号だからな。
美春と同様に薫も学園の卒業と魔術医師としての栄誉を手に入れることができる。
俺や優奈とは違って薫は美春と同様に表の舞台で名前を広めることが出来るからだ。
…だからこそ、その違いが薫の心に負担をかけているのだろう。
優奈には手に入れられない物を自分は手にすることができる。
その決定的な差があるために、
優奈に対して負い目を感じているのかもしれない。
そんな薫の感情の変化を感じ取ったのだろうか?
「あ、いえ、その…。で、でも…その、だからと言って悲しいとかそういうのはないですから…。ほ、ホントですよ?」
「………。」
慌てていいわけをしてみる優奈だが、
それでも薫の心は沈んだままのようだった。
…どうやら、まだやるべきことがあるようだな。
俺の役目はすでに終わったと思っていたが、
もう一つだけやるべきことが残っていたようだ。
…薫と優奈のために、最後に一つだけ準備を進めておくか。
実現できるかどうかは分からないが、
証だけならどうにかなるかもしれない。
…これもけじめだ。
優奈のためにできること。
その全てを叶えなければ悠理との約束は果たせない。
…最後まで守り抜くと誓ったんだ。
優奈の心を守るために。
再び『あの男』に協力を願うことにした。




